2017 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前皮質ドパミン系によるストレス抵抗性増強を担う神経回路とその分子機序の解明
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17J09360
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 将之 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 薬理学 / 神経科学 / ストレス / うつ病 / 前頭前皮質 / ドパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
社会挫折や孤独から受けるストレスは、抑うつや不安亢進など情動変容を惹き起し、精神疾患のリスク因子となる。我々は社会挫折ストレスを用い、単回ストレスは内側前頭前皮質(mPFC)のドパミンD1受容体サブタイプを介してmPFC神経細胞の樹状突起やスパインを造成してストレス抵抗性を増強すること、反復ストレスはmPFCドパミン系の機能低下を誘導し情動変容を促すことを見出した。したがって、mPFCドパミン系はストレス抵抗性増強を担うことが示唆されるが、ストレス抵抗性を増強する神経回路とその制御の実態は不明である。本研究では、社会挫折ストレスを用い、ストレス抵抗性増強を担う神経回路とmPFC神経細胞の機能・形態的増強の機序と神経回路制御での役割を解明し、ストレス性疾患に対する新たな創薬標的の提言を目指す。 本年度は、ドパミンD1受容体の活性化と単回の社会挫折ストレスにより制御される脳領域を免疫染色により調べ、ストレス抵抗性増強を担うmPFCからの神経投射先を選定した。さらに、この神経投射を選択的に制御するために、逆行性感染性ウイルスベクターを選定した脳領域に注入し、逆行性にmPFC神経細胞に感染することを確認した。並行して、ドパミンD1受容体による形態的増強に関わる分子を検討するための機能制御実験を確立した。現在、本研究により確立した機能制御実験を用いて、形態制御因子とストレス抵抗性増強の関与を解析しており、ストレス抵抗性増強に関わる形態制御因子の同定に迫る知見が得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の当該年度の研究計画では、ストレス抵抗性増強を担う神経回路を解析することを目的としていた。「研究実績の概要」の通り、ドパミンD1受容体の活性化及び単回の社会挫折ストレスにより制御される脳領域を、免疫染色を用いて解析することで、ストレス抵抗性増強を担うmPFCからの神経投射先を選定した。さらに、逆行性感染性ウイルスベクターを導入し、逆行性にmPFCに感染することを確認した。また、当初の研究計画では、ドパミンD1受容体によるストレス抵抗性増強を担うmPFC神経細胞の機能・形態的増強の分子機序についても解析する予定であった。すでに網羅的遺伝子発現解析を通じて、単回の社会挫折ストレスによりドパミンD1受容体を介して誘導される細胞形態制御因子を特定しており、これらを遺伝子操作する機能制御実験を立ち上げた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で選定したストレス抵抗性増強を担う候補の神経投射の神経活動を化学遺伝学的手法により操作し、その神経投射の神経活動がストレス抵抗性増強に関わるかを調べる。ストレス抵抗性増強を担う神経投射が同定された場合は、当該領域に投射するmPFC神経細胞において単回や反復ストレスによる神経細胞活動変化や神経細胞形態変化も調べ、情動行動と神経細胞形態変化の因果関係にも迫る。また、本研究で確立した機能制御法を用いて、本研究で特定している単回の社会挫折ストレスによりドパミンD1受容体を介して誘導される細胞形態制御因子が単回や反復社会挫折ストレスによる情動変化に関わるかを調べる。加えて、独自に開発した神経細胞の低密度標識法を用い、それらの遺伝子群が単回や反復社会挫折ストレスによる神経細胞形態変化に与える影響も調べる。
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Research Products
(5 results)