2017 Fiscal Year Annual Research Report
マンガン解毒に寄与する輸送体及び細胞内制御因子の機能解析
Project/Area Number |
17J09455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西藤 有希奈 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 輸送体 / マンガン / 亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】 マンガンは生体において様々な酵素の補因子として機能するなど幅広い役割を担う。一方で、過剰量では極めて強い毒性を示し、パーキンソン病などの神経疾患を引き起こすことが報告されている。従って、細胞内のマンガン代謝は厳密に制御される必要があるが、マンガン代謝機構についてその詳細は明らかとされていない。申請者はこれまでに、脊椎動物細胞におけるマンガン代謝機構を適切に評価できる系を構築し、亜鉛トランスポーターZNT10が強力なマンガン輸送活性を示すことを明らかとしてきた。また、金属基質認識機構の観点からZNT10のマンガン輸送能において重要な残基を同定し、ZNT10のマンガン認識機構の一端を明らかとしてきた。本研究では、これまでに培ってきたこれら情報を活用し、ZNT10へマンガンを受け渡す制御因子を同定することを目的とした。 【本年度の進行状況】 シャペロン因子はZNT10と直接的に相互作用することで、ZNT10へマンガンを受けわたす可能性が高いため、ZNT10と相互作用する因子の同定を目標に解析を進めた。Flp in Trex システムを導入した細胞株を用い、DOX誘導時にのみZNT10を発現することのできる細胞株を樹立した。免疫沈降法により、ZNT10に結合するタンパク質を精製したが、相互作用因子の同定には至らなかった。また、マンガンを選択的に輸送するZNT10の細胞質C末端領域は、亜鉛を選択的に輸送するZNT1とアミノ酸配列の相同性が低いことに着目し、それぞれのC末端側領域に相互作用する因子の差異について解析を進めた。精製用のタグを融合させたZNT10およびZNT1のC末端領域を大腸菌を用いて発現させ、アフィニーティー精製により高純度なタンパク質溶液を得る条件について検討し、ZNT10およびZNT1のC末端領域の両方において、高純度なタンパク質溶液の精製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、ZNT10と相互作用する因子の同定を試みたが、特異的な相互作用因子の同定には至らなかった。また、ZNT10とZNT1のC末端領域について大腸菌での発現と高純度でのタンパク質の精製に成功したが、それぞれのC末端領域に相互作用する因子の同定には至らなかった。本年度の解析においては、因子同定のためのツーツや解析条件の確立には成功したが、特異的な因子の同定には至らなかったため、期待ほどの進展は得られなかったと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果をもとに、下記に示す解析法を用いてより詳細な解析を行い、シャペロン因子の同定を目指す。 1)ZNT10に相互作用する因子の探索 クロスリンカーを用いて弱い結合で相互作用する因子についても検討するなど、より精度の高い免疫沈降による精製条件の検討を進める。さらに、近傍の因子をビオチン化修飾するビオチンリガーゼ (BirA)を用いたプルダウンシステムを使用し、ZNT10と間接的に相互作用する因子の精製条件の検討する。 2)ZNT10とZNT1のC末端領域に着目した解析 本年度作成した精製タンパク質を用いて、細胞抽出液中より、ZNT1およびZNT10のC末端領域に相互作用する因子を精製する。ZNT10とZNT1それぞれに対して特異的なタンパク質バンドが得られた場合には、質量分析装置を用いてZNT10とZNT1へ相互作用する因子の差異を明らかとする。 上記の1)2)解析法により、ZNT10に相互作用する因子を網羅的に解析することで、ZNT10にマンガンを受け渡すシャペロン様因子の候補を見出す。さらに、当該因子の欠損株および過剰発現株を作成し、見出した相互作用因子の機能解析を行い、ZNT10のマンガン獲得から排出機構までの一連の分子機構の解明を目指す。
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