2018 Fiscal Year Annual Research Report
記憶・学習などの脳高次機能を制御する新規シグナル伝達経路の網羅的解析
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17J09461
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
呉 夢雅 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | SynGAP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、Rho-kinaseによるSynGAP1のリン酸化によって、SynGAP1のGAP活性が低下することで、Ras/Raf/ERK経路が活性化されることを見出している。そこで、SynGAP1のリン酸化部位欠損変異体(S842A)を用い、Rasの活性化への影響を検討した。COS7細胞にMyc-SynGAP1(WTまたはS842A変異体)およびHA-Rho-Kinase -CATを共発現させた後、活性化Rasと選択的に結合するRap1-RBDを用いたプルダウン実験を行った。その結果、コントロールと比較してRho-kinase-CAT存在下で、SynGAP1のリン酸化が亢進し、活性化型Rasの結合量が増加した。一方、Myc-SynGAP1-S842A変異体では活性化型Rasの結合量の増加は認められなかった。したがって、Rho-KinaseはSynGAP1-S842をリン酸化し、SynGAP1のGAP活性を低下させることで、Ras/Raf/ERK経路を活性化させる可能性が示唆された。 SynGAP1はシナプス後肥厚部に存在する足場タンパク質であるPSD95と相互作用することが知られている。そこで、Rho-KinaseのSynGAP1リン酸化によってPSD95との相互作用に影響を及ぼすかどうかを検討した。脳線条体の組織培養を行い、オカダ酸およびY27632処置を行った後、抗SynGAP1抗体を用い免疫沈降実験を行った。その結果、コントロールと比較して、オカダ酸処置によりSynGAP1とPAS95と結合量が低下し、その結合量の低下はY27632処置により抑制された。したがって、Rho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化依存的に、SynGAP1とPSD95の結合が制御されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Rho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化サイトの同定を試みた。SynGAP1をNT (PH-C2ドメイン), NTMD (PH-C2-RasGAPドメイン)、CT (Disordered-C2ドメイン)の3つのフラグメントに分割し、リン酸化タンパク質結合タンパク質である14-3-3との結合実験を行ったところ、SynGAP1-CTがRho-kinaseによるリン酸化依存的に14-3-3と結合した。質量分析によって同定されたSynGAP1の842番目のセリンをアラニンに置換した変異体S842Aを作成し、14-3-3との結合実験を行ったところSynGAP1-CT-WTと比較してSynGAP1-CT-S842A変異体では14-3-3との結合量が減少した。In vitroのリン酸化実験により、Rho-KinaseによりSynGAP1-CT-S842がリン酸化されることを確認した。 生体内でRho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化の変動を測定するために、SynGAP1の842番目のセリンのリン酸化を認識する抗リン酸化抗体(pS842)の作製を行った。 COS7細胞にMyc-SynGAP1を発現させ、脱リン酸化酵素阻害剤であるオカダ酸およびRho-Kinaseの特異的阻害剤Y27632を処置し、抗リン酸化抗体でWBを行った結果、コントロールと比較してオカダ酸処置によりSynGAP1-S842のリン酸化が亢進し、そのリン酸化の亢進はY27632の処置により抑制された。 COS7細胞にMyc-SynGAP1およびHA-Rho-Kinaseを共発現させた結果、コントロールと比較して、HA-Rho-Kinase-CAT存在下で、SynGAP1-S842のリン酸化が亢進した。したがって、細胞内でRho-KinaseはSynGAP1の842番目のセリンをリン酸化することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Rho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化解析 前年度までのIn vitroのリン酸化実験により、研究代表者はRho-KinaseがSynGAP1のC末の842番目のセリン(S842)をリン酸化すること見出し、S842のリン酸化を認識する抗リン酸化抗体の作製を行った。そこで本年度は作製した抗リン酸化抗体を用いて、薬剤によりグルタミン酸シグナルを活性化させた際のRho-Kinaseの活性化と内在性のSynGAP1のリン酸化の解析を行う。 2. 樹状突起スパインにおけるSynGAP1の局在解析。前年度までにRho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化依存的に、SynGAP1とPSDの足場タンパク質であるPSD95の結合が制御されることを見出したため、本年度は薬剤によりグルタミン酸シグナルを活性化させた際の樹状突起スパインにおけるSynGAP1とPSD95の局在を解析する。 3. 樹状突起スパインの形態とシナプス可塑性の解析Rho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化が樹状突起スパイン形態へ影響を与えるかどうかを調べるため、SynGAP1のリン酸化部位欠損変異体及びリン酸化擬似変異体を発現するアデノ随伴ウィルス(AAV)作製を行う。AAVを神経細胞に導入することで、Rho-KinaseによるSynGAP1のリン酸化とスパインの形態変化、およびシナプス可塑性との関連を明らかにする。
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Research Products
(1 results)