2017 Fiscal Year Annual Research Report
N6-メチルアデノシンのRNA配列選択的脱メチル化法の開発
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17J09621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神山 健太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | π-Clamp / 配列選択性 / ALKBH5 / N6-メチルアデノシン / 脱メチル化 / タンパク質工学 / エピジェネティクス / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はN6-メチルアデノシン(m6A)の脱メチル化酵素であるALKBH5の改変を行った。 m6Aは多くのmRNA上に見られる修飾であり、mRNAの局在や分解、翻訳量の制御などに関与すると言われている。近年ではm6AがmRNAの上流にあるか下流にあるかで果たす役割が異なることが示唆されている。しかし特定の位置のm6Aを制御する手法が無いために詳細な研究はなされていなかった。そこでm6Aの脱メチル化酵素ALKBH5に配列選択性を付与することで特定の位置のm6Aを選択的に脱メチル化できるのではないかと考えた。相補的なDNAとRNAが二本鎖を形成することに着目し、ALKBH5にDNAを結合させることで特定のRNA配列近傍のm6AのみをALKBH5によって脱メチル化しようと試みている。平成29年度では(1)DNAを結合させるため、及び、(2)非特異的なALKBH5の脱メチル化反応を抑制するためのALKBH5の改変を行った。 DNAを結合させるための手法として、第一の候補としてDNAとALKBH5を結合させるために必要な化学修飾及びアミノ酸配列が最も小さいためALKBH5の活性に影響を与えないと考えられるπ-Clamp法を用いることにした。π-Clamp法ではFCPFというタグ配列中のシステイン残基選択的に結合が生成する。そのため必要なタグ配列をALKBH5のベクターに組み込み、C末端にFCPF配列をもつALKBH5を大腸菌で発現させた。 非特異的なALKBH5の反応を抑制するためには、(1) 標的としないRNAには結合しないが、(2) m6Aの脱メチル化活性を保持していることが必要であると考えた。RNAとの結合に関与しうる残基に変異を導入したALKBH5もしくはm6Aの脱メチル化に関与するドメインのみをもつALKBH5は上記の条件を満たすと考え、それらのベクターを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はRNA配列選択的にALKBH5の脱メチル化反応を引き起こすものである。そこで、如何にしてALKBH5にRNA配列選択性をもたせるかが重要である。ALKBH5に配列選択性をもたせるために、特定配列をもつRNAに対する結合能を上げ、一方で特定配列をもたないRNAに対する結合能を下げるアプローチを計画していた。具体的には、特定配列のRNAに相補的な配列のDNAをALKBH5に結合させることで特定配列のRNAへの結合能を上げ、またALKBH5自体のRNA結合能を減少させることで非特異的なRNAへの結合能を下げることができると考えた。平成29年度はDNAと結合できるようにALKBH5を改変し、またRNA結合能を落とすためのALKBH5の改変を予定していた。いずれも本年度のこれまでの研究で達成できた。特にALKBH5のRNA結合能を減少させるために、ALKBH5とRNAの結合に重要と考えられるアミノ酸残基に変異をいれたものやALKBH5の脱メチル化活性に重要なドメインのみをもつものが用意でき、これらのタンパク質が実際にどのような挙動をするか興味深い。申請書の研究計画と比較して、期待通りの進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度で作成したALKBH5を実際に用いたアッセイ及びDNAとALKBH5の結合する反応を進めていきたい。平成29年度ではDNAと結合できるように改変されたALKBH5及びその変異体、脱メチル化活性のあるドメインの取得を行った。まずこれらのALKBH5が脱メチル化能を保持しているかを検証したい。そのためにm6Aを含むRNAを化学合成により作成し、ALKBH5と作用させてm6Aが脱メチル化されるかを確認する予定である。次にALKBH5と結合できるようにDNAを化学修飾し、π-Clamp法によってDNAをALKBH5と結合させる。最後に得られたDNA-ALKBH5結合体が目的の挙動を示すか、つまりRNA配列選択的な脱メチル化を引き起こすかを調べたい。RNA配列選択的なm6Aの脱メチル化が確認できれば、本手法は初めての配列選択的なm6Aの制御手法となる。この手法を用いてm6A修飾の位置とRNAの機能の関係を解き明かしていきたい。
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