2017 Fiscal Year Annual Research Report
非晶構造解析に基づく高効率塗布型ホストフリーTADF材料の設計と開発
Project/Area Number |
17J09631
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 啓幹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 有機EL / 熱活性型遅延蛍光 / 深青色 / 塗布法 / アダマンタン置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、塗布成膜可能かつ非晶neat膜において高効率深青色発光を示す熱活性型遅延蛍光(TADF)材料の分子設計指針の確立を第一の目標としている。その材料が有すべき性質としては、①深青色、②ホストフリー、③高い非晶安定性(熱安定性)、④高い塗布成膜性である。 平成29年度は塗布成膜可能な深青色発光材料の分子設計に関して成果が得られた。具体的な方策は、アダマンタン骨格をTADF分子の一部に置換基として導入するという戦略である。この方策により、発光色の劇的な深青色化に成功し、MA-TA、FA-TA、PA-TAと名付けた高効率深青色TADF材料群を得た。これら材料は遍在するH、C、N元素のみから構成される点が大きな特長であり、また、これら材料はハロゲン溶媒のみならず、非ハロゲン溶媒にも高い溶解性を持っている。さらに、飛躍的な熱安定性の向上も併せて実現できた。塗布型有機EL素子においては、特にMA-TAやFA-TAを発光材料に用いた場合に、極めて高効率な深青色EL発光が得られている。国際照明委員会が定める色度座標CIE(x,y)を用いると、それぞれy<0.2およびy<0.15という深い青色領域において2018年3月現在、世界最高効率を示している。以上、本研究成果から、①、③、④を同時に満たす分子設計指針の一つとして、アダマンタン置換という簡便な方策を得ることに成功した。 一方、産業面において、有機ELは、省電力化、低コスト化に課題を抱えている。深青色発光の高効率化は、大幅な省電力化を可能とする。さらに塗布法は、有機EL素子作製の低コスト化に大きく貢献する。もちろん、熱安定性向上等の高耐久化も省電力化、低コスト化の一助となる。本研究成果は、安価な元素からなり、高い熱安定性をもつ、塗布成膜可能な高効率青色発光材料を得る分子設計指針が得られたという点が意義深く、産業的な波及効果も期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度には、主に固体NMRを用いた熱活性型遅延蛍光(TADF)材料の非晶膜に対する構造解析、平成30年度には塗布成膜可能な深青色発光材料の開発を計画していたが、これらの取り組みの中で、塗布成膜可能な深青色発光材料の開発に大きなめぼしが付いたため、平成29年度は、一足飛びに平成30年度計画を推進した。その結果、アダマンタン骨格を用いることで、「深青色」「高い塗布成膜性」を有する新規TADF材料の開発に成功した。さらに、飛躍的な熱安定性の向上も併せて実現でき、「高い非晶安定性(熱安定性)」を有する分子設計指針であることも分かった。平成29年度に得られた成果は、本研究課題が第一目標に定める、「塗布成膜可能かつ非晶neat膜において高効率深青色発光を示す熱活性型遅延蛍光(TADF)材料の分子設計指針の確立」実現に向けて研究を大きく加速させるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題遂行にあたり、あとは、「ホストフリー」に関わる項目が残されている。 平成29年度に開発した材料全てにおいて、非晶neat膜におけるPL波長が、トルエン溶液中やドープ膜中のそれと比べ、短波長シフトするという興味深い現象が観測された。一般に、非晶neat膜中においては、TADF分子同士の相互作用が大きくなるため、発光波長は分散膜に比べて長波長シフトを示すことが多い。しかしながら、ホストフリー化可能な深青色発光材料を設計するに当たり、neat膜における長波長シフトは好ましくない現象であり、その抑制は課題遂行に欠かせない要素である。アダマンタンではなくベンゼン環を用いた場合においては、その非晶neat膜において長波長シフトが観測されていたことから、アダマンタン置換が、長波長シフトを誘発する分子間相互作用の抑制に寄与したと考えられる。 そのため、平成30年度以降は、申請書記載の濃度消光の程度が異なる分子群、および、平成29年度に得られたアダマンタン骨格を有する化合物群について、主に固体NMRを用いた熱活性型遅延蛍光(TADF)材料の非晶膜に対する構造解析を行い、「ホストフリー」実現に向けて研究を推進していく予定である。新規材料の設計も同時に推し進める。
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Remarks |
上記タイトル「アダマンタン置換」は、正式には 「アダマンタン置換」塗布成膜可能、高い熱安定性、深い青色発光、高効率という特性を兼ね備えた有機EL発光材料の開発に成功 である。文字数制限があったため、上では「アダマンタン置換」のみを記載している。
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Research Products
(4 results)