2017 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的タンパク質ラベル化法を利用したタンパク質間相互作用の網羅的解析法の開発
Project/Area Number |
17J09635
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
天池 一真 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 生細胞有機化学 / 触媒反応 / タンパク質ラベル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室ではタンパク質の選択的ラベル化法の一つとしてaffinity-guided DMAP chemistry (AGD化学)を報告している。AGD化学は標的タンパク質に対するリガンドとアシル転移触媒であるDMAPを結合したリガンド連結DMAPとチオエステルとをあわせ用いることで、目的のタンパク質をラベル化する手法である。リガンド連結DMAPは標的タンパク質に結合し、リガンド結合部位近傍に存在する求核性アミノ酸残基とチオエステルとのアシル転移反応を触媒する。AGD化学は生細胞の膜タンパク質に対して高選択的にラベル化が進行することがわかっている。しかしチオエステルの高い求電子性のため、より夾雑な系においては標的以外のタンパク質に対する非特異反応が進行し、またチオエステルは生体適合性が低いという問題があったため、生体組織への適用が困難であった。 この問題点を克服すべく、今回我々は新たなアシル転移触媒系として、オキシム触媒及びN-アシル-N-アルキルスルホンアミド(NASA)型アシルドナーの組合せを見出した。本触媒系はAGD化学と比べ非特異反応が少ないため、細胞破砕液のような夾雑系でも、標的タンパク質選択的なラベル化が可能となった。また、生細胞においては内在性の炭酸脱水酵素や葉酸受容体の選択的ラベル化に成功した。さらにはNASA型アシルドナーの高い生体適合性により、マウスの海馬スライスのような組織におけるグルタミン酸受容体の選択的ラベル化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度はタンパク質間相互作用(PPI)の網羅的な解析を可能とする新規触媒的タンパク質ラベル化反応の開発をおこないました。新たな触媒的タンパク質ラベル化反応として、ピリジニウムオキシム触媒、N-acyl-N-alkylsulfonamide(NASA)型アシルドナーを用いた反応系の検討をおこないました。その結果、本反応系は従来のDMAP触媒/チオエステルの反応系と比べ生体適合性が高いことがわかりました。具体的には、新たに見出した系は中性条件下においても高効率で目的タンパク質をラベル化可能でした。また従来法で問題であった酵素によるアシルドナーの分解についても、大幅に改善されることがわかりました。さらに、本反応系は従来では不可能であった、生体組織(脳スライス)においても適用可能であり、グルタミン酸受容体の一種であるAMPA受容体のラベル化を達成しました。この結果はJ. Am. Chem. Soc.誌へ掲載されており、今年度の研究進歩状況は期待以上の進展があったと言えます。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出した反応系は最終目標であるPPI解析法への応用ができなかった。そこで新たな触媒反応の開発をおこなう。具体的にはチオウレア触媒を用いた水中でのエポシキドの開環反応(Chem. Commun., 2006, 4315.)を参考に、新たな反応系を確立する。エポキシドは反応性が高く非特異的な反応が問題となる。そこで反応点周りを置換基によって嵩高くしたり、電子的に反応性を落とすことで非特異反応を低減させる。またチオウレア触媒に関しても電子的なチューニングを行うことで反応性の制御を行う。さらには有機分子触媒だけでなく遷移金属触媒を用いた触媒的ラベル化法の開発を行う。まずは水中でも生成が確認されているπアリルパラジウム種とロジウムカルベノイド種を求電子剤として反応の検討を行う。πアリルパラジウム種に関しては水溶性ホスフィン配位子であるTPPTSを用いた触媒を参考に条件検討を行う。またロジウムカルベノイド種に関しては、Ladbury、Ballらの報告を参考に酢酸ロジウム(II)二量体を触媒として条件検討を行う(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 10138.)。
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Research Products
(4 results)