2017 Fiscal Year Annual Research Report
温度応答性高分子に結合するペプチドを基盤とする機能性ソフトマテリアルの創製
Project/Area Number |
17J09664
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 星冴 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 温度応答性 / 生体高分子 / 分子認識 / 構造転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでペプチドの結合の標的として、アニオン重合により合成したメソ配列を多く含んだポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPAM) を用いてきた。本年度はペプチドの応用範囲を一般的なPNIPAMに拡大することを目指し、より汎用性の高いラジカル重合により合成したPNIPAMを用い、PNIPAMに対してペプチドが溶液中でも特異的な結合を示すかを明らかにすることを検討した。蛍光プローブであるN-(1-アニリノナフチル-4)マレイミド (ANM) をペプチドのC末端側にラベル化した。ペプチド単独の状態ではラベル化したANMはほとんど蛍光を示さなかったが、PNIPAM存在下ではANMの蛍光強度が増大したことから、ペプチドは水に溶解したPNIPAMに対しても特異的に結合することがわかった。 一方で、ペプチドの結合がPNIPAMの相転移温度に与える効果を評価した結果、ペプチド濃度に依存した相転移温度の低温側へのシフトが見られた。また示差走査熱量測定から、この低温側へのシフトはペプチドの結合によりPNIPAMの脱水和が促進されることが明らかとなった。さらにANMをPNIPAM末端にラベル化し、蛍光変化を指標としてPNIPAMの相転移挙動を評価した結果、PNIPAMの構造転移に由来して蛍光強度が変化する温度はペプチドの濃度によって制御できることがわかった。 また、ラジカル重合により合成したPNIPAMを用い、ペプチドで修飾したタンパク質を相転移以上の温度でPNIPAMと共沈殿できるか評価した。その結果、これまで用いていたメソ配列を多く含むPNIPAMは相転移温度以上でほぼ全てが遠心後に沈殿したのに対し、ラジカル重合により合成したPNIPAMは完全に沈殿せず、一部が上清に残存した。これはおそらくメソ含有量の違いによって、相転移以上におけるPNIPAMの凝集状態が異なるものと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでペプチドの利用は精密重合法により合成したPNIPAMに限られていたが、ラジカル重合により合成したより汎用性の高いPNIPAMに対しても拡張できることがわかり、より幅広い応用へと展開できる可能性が示された。これは今後、PNIPAMをグラフト化した表面やPNIPAMからなるハイドロゲルへの展開において重要な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラジカル重合により合成したPNIPAMは相転移以上の温度における遠心によっても沈殿しないことがわかった。そこで、ポリエチレングリコールとデキストラン水溶液からなる水性二相系にPNIPAMを展開し、PNIPAMの各相への分配の差を利用してペプチドを修飾したタンパク質を分配すること目指す。まず分子量の異なるPNIPAMを合成し、PNIPAMの分子量や濃度、温度を変化させて二相系におけるPNIPAMの分配挙動を系統的に評価する。さらにペプチドをタンパク質に修飾することで、ペプチドの結合とPNIPAMの分配を利用したタンパク質の特異的な分離を検討する。本系はPNIPAMを相転移以上で遠心させて沈殿させる必要がないため、より温和な条件下でのタンパク質の分離が可能になる。
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Research Products
(3 results)