2017 Fiscal Year Annual Research Report
世界最高強度コンクリートの力学モデルの開発とコンクリート構造物への展開
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17J09680
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柳田 龍平 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 繊維補強無孔性コンクリート(PFC) / 応力-ひずみモデル / 引張軟化モデル / 等価検長 / プレストレストコンクリート / 外ケーブル方式PCはり / プレキャストPFCセグメント / 土木材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,世界最高強度コンクリート(PFC)の力学モデルの提案に注力し,実験的ならびに数値解析的に検討を行った.まず,繊維補強PFCの圧縮試験から,圧縮強度,ヤング係数等の圧縮に対する力学特性を明らかにし,さらにポストピーク領域を含めた圧縮応力-ひずみ関係をモデル化するに至った.また,曲げ試験結果をもとに推定したPFCの引張軟化曲線を3直線で表した引張軟化モデルを提案し,その後,提案した圧縮モデルおよび引張軟化モデルを用いて,矩形断面はりのはり高さをパラメータにFEM解析を実施し,PFCの曲げ強度の寸法依存性を考慮した引張応力-ひずみ関係の決定手法を提案するに至った.これにより,PFCを用いた構造部材の曲げ耐力を一般的な断面解析によって算定することが可能になった. さらに, PFCを用いた新構造形式について検討するため,PFCセグメントを用いた外ケーブル方式セグメントPCはりの構造性能評価を試みた.PFCは世界最高となる300N/mm2以上の圧縮強度を有する材料であることから,外ケーブルを用い,PFCの圧縮強度を活かすことで,より小さい断面でより大きなプレストレスを与えることができ,橋梁スパンを長大化できると考えられる.そこで,部材に与えるプレストレスをパラメータにウェブ厚,フランジ厚がともに40mmとなるT形の外ケーブル方式PFCセグメントはりの曲げせん断実験を行った.結果,40N/mm2という大きなプレストレスを与えたPFCのせん断耐力は,既往の超高強度材料であるUFCのせん断耐力算定式を用いて算出したせん断耐力を超え,最終的には外ケーブルの降伏が先行する曲げ引張破壊に至ることが明らかとなった.この研究成果は,PFCを用いた構造部材の性能を評価した初めての事例であり,得られた知見はPFCを用いた構造部材の設計に資するものになったといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)最高強度コンクリートの力学特性に関する基礎的な実験データの蓄積、(2)実験データおよびその解析結果に基づく力学モデルの提案、(3)PFCを用いた構造部材のせん断耐力評価手法の提案、(4)実験と数値解析的検討に基づくPFCを用いた新構造形式の提案、の4ステップに分かれた研究計画としている。平成29年度はこの内の、(1)力学特性に関する実験データの蓄積ならびに(2)力学モデルの提案に注力し、さらに(4)新構造形式の提案についての実験的検討も行った。 力学特性に関しては、すでに必要な実験的検討を終了しており、繊維補強PFCの圧縮・引張に対する力学特性を評価できた。また、その実験データおよび解析結果について分析し、繊維補強PFC部材の構造設計に不可欠な応力-ひずみモデルを提案するに至っている。これらについては既に論文に取りまとめて、外部に発表している。当初の研究計画では、この力学モデルの提案に続いて、PFCはり部材を作製し、(3)せん断耐力評価手法について実験的かつ解析的に検討を進める予定であったが、(1)および(2)の検討の結果、PFCの引張に対する力学特性は既往の超高強度材料であるUFCと同等程度であったため、PFC構造部材のせん断耐力の算定手法は既往の知見をもとに概ね評価できるものと仮定し、平成30年度に計画していた(4)PFCを用いた新構造形式の提案のため、外ケーブル方式PFCセグメントはりの構造性能評価に関する実験的検討を進めることとし、これについて有用な実験データを蓄積することができた。研究全体としては十分に成果が挙がっており、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、(4)PFCを用いた新構造形式の提案のため、外ケーブル方式PFCセグメントはりの構造性能評価に関する実験をさらに継続したのち、モデル化した力学モデルを用いた数値解析を行い、外ケーブル方式PFCセグメントはりの破壊形態に及ぼすプレストレスの影響についてさらに検討を進める予定である。
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