2017 Fiscal Year Annual Research Report
多元的無知状態で規範が維持されるメカニズムの解明ー社会の流動性に着目してー
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17J09698
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩谷 舟真 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 多元的無知 / 流動性 / 集団規範 / 評判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多元的無知状態が維持されるメカニズムを検討することである。平成29年度は、主に以下の観点から研究を行い、上記のメカニズムの検討を目指した。 1つ目の研究では、居住地流動性の高い社会(都道府県)と低い社会を対象にして過去に実施した社会調査の結果について、データ分析、学術誌への投稿を行った。この調査では、人々が集団規範を遵守するプロセスが居住地流動性の高低によって異なるという仮説を検討した。調査の結果、1)高流動性社会では、関係構築力の高い者に限り(規範遵守に伴う)評判上昇が規範遵守行動を促すこと、2)低流動性社会の人々は(規範逸脱に伴う)評判低下可能性を高く見積もり、規範に従うことが分かった。さらに、2)のプロセスにおける評判低下可能性は実際よりも過剰に見積もられていることがわかった。このことは、低流動性社会において、多元的無知状態が生起・維持されやすいことを示唆する結果である。この結果は、査読付きの学術雑誌「社会心理学研究」に掲載されている。 2つ目の研究は実験の手法を用いた研究であり、社会的価値(としての能力)の観点から、多元的無知状態で規範に従いやすい者の個人特性を検討した。新たに実験を行い、1)他者に自らの行動が公開される場合には、能力の低い者ほど規範に従うこと、2)他者に自らの行動が公開されない場合には、能力の高い者と低い者とで規範に従う程度が変わらないことを明らかにした。これらの結果は、能力の低い者ほど多元的無知状態で維持されている規範に従いやすいことを示しており、「日本社会心理学会第58回大会」にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は多元的無知状態の維持メカニズムについて社会環境(居住地流動性)の観点と個人特性(社会的価値)の観点から検討を行った。前者の観点から行った研究は査読付き学術論文として掲載されており、後者の観点から行った研究についても、現在国際誌への投稿に向けて執筆を行っている。いずれの研究も概ね事前の想定通りの結果が得られ、順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、社会調査や実験室実験を通じて多元的無知の生じやすい社会環境や、多元的無知状態で規範に従いやすい個人特性を検討する。得られた結果については、国内外の学会での発表や、学術誌への投稿を行う。
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