2018 Fiscal Year Annual Research Report
セスタテルペン合成酵素の合理的機能改変による新規有用天然物の創出
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17J09712
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三橋 隆章 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | テルペン合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、セスタテルペン合成酵素の合理的機能改変を通じた新規有用天然物の創出である。こうした目標を達成するにあたっては、まず、セスタテルペン合成酵素が触媒する反応のメカニズムを理解する必要がある。酵素が反応を制御する仕組みが明らかになって初めて、改変した酵素の設計が可能になる為である。 こうした背景から本年度は、計算科学を用いたセスタテルペン合成酵素の反応解析を行った。結果、五環性の複雑骨格を有するセスタテルペンの一種Quiannulateneが、前駆体であるゲラニルファルネシル二リン酸(GFPP)から形成される際の酵素反応のメカニズムについて詳細を明らかにした。 計算の結果、反応全体を計算によって再現することができた他、酵素が前駆体であるGFPPのコンフォメーションを反応に最適な形に整えた上で反応を開始することで、複雑な反応を制御しているのではないかと推測された。また、当初存在を予測していなかった中間体を経て、酵素内の反応が進行している可能性が示唆された。 その他の成果として、セスタテルペン合成酵素とアミノ酸配列上の類似度が高い酵素を探索する過程において、新規のジテルペン合成酵素を糸状菌Penicillium chrysogenum MT-12から同定した。セスタテルペン合成酵素及びジテルペン合成酵素は、類似の反応を触媒するものの、酵素反応産物の分子量が異なる。糸状菌に由来するジテルペン合成酵素とセスタテルペン合成酵素は、アミノ酸配列が類似していることが知られており、両者の区別をアミノ酸配列のみによって行うことは、現在のところ非常に難しい。今回取得した酵素が、ジテルペン合成酵素、セスタテルペン合成酵素の区別をする上で有益な情報を与えると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行ったセスタテルペン合成酵素の計算化学による解析は、通常、直接観測することが困難な酵素内部における反応に関して重要な知見を与えるものである。これらの成果は、セスタテルペン合成酵素への理解を深め、セスタテルペン合成酵素の合理的機能改変に寄与するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまでに同定されてきたセスタテルペン合成酵素同士のアミノ酸配列の比較解析や計算化学による解析から得た知見をもとに、酵素反応の制御に重要な役割を担っている酵素の部位を見出し、その部分に変異を導入することで、新規化合物をつくることのできる変異型セスタテルペン合成酵素を創出したい。
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