2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J09736
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北嶋 直弥 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | アクシオン / 原始ブラックホール / 暗黒物質 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度における私の研究として、原始ブラックホールが宇宙初期に形成するシナリオを考え、その痕跡を21cm線観測によって探る可能性を議論した。特に近年のLIGOによる重力波の直接観測によって確認された連星ブラックホール合体イベントを説明できる質量を持つ原始ブラックホールに焦点を当て、宇宙の進化にどのような影響を及ぼすかを考察した。結果として宇宙初期のミニハローの数を大きく変更することを明らかにしたと同時に、ミニハローによる21cm線放射について議論し、SKAに代表される将来の21cm観測による検出可能性を考察した。特にLIGOイベントを説明できる原始ブラックホールに関して、宇宙背景放射の観測などによる既存の制限よりも強い制限を与えられることを指摘した。 またカーバトンシナリオにおいて予言される暗黒物質の等曲率揺らぎに関する詳細な研究を行った。特に暗黒物質がWIMPあるいはアクシオンである場合について、それらの生成プロセスを取り入れた詳細な数値計算を行い、従来の制限を大きく修正する結果が得られた。 さらにアクシオンとゲージ場が強く相互作用している場合の宇宙初期の進化の過程に関する研究も行なった。特に非線形なダイナミクスを追うため、アクシオンと電磁場との相互作用を取り入れた格子シミュレーションコードを独自に開発した。結果としてアクシオンの振動開始時に起きる爆発的なゲージ場生成によって、アクシオン暗黒物質の存在量が従来に比べ大きく変更され得ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では主に宇宙初期におけるアクシオン暗黒物質の進化の過程で生じる位相欠陥に関する研究の遂行であったが、この研究に関しては平成29年度以前に大部分を終えてしまっていたため、原始ブラックホールやカーバトンシナリオに関する研究に新たに着手し、論文にまとめることができた。さらに平成30年度に行うことを計画していたアクシオンと電磁場の相互作用を入れた数値シミュレーションコードを開発し、これを用いて一つの成果をあげることができた。故に私の研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の方策について私は平成29年度に開発したアクシオン電磁気学の数値シミュレーションコードを改良し、アクシオンおよび電磁場による重力波生成の計算を可能にすることを計画している。これによって、アクシオン電磁場の相互作用による非線形なダイナミクスから予言される重力波を定量的に評価することが可能となる。さらに、アクシオンと中性子星周りの磁場から放出される電磁波が計算できるような改良も施し、電波望遠鏡などによる観測可能性を議論することも今後の方策として計画している。
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