2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J09742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平見 健太 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 国際公法 / 国際経済法 / WTO / FTA / 相互主義 / 最恵国待遇 / 無差別原則 / 紛争処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「自由・無差別・多国間主義」を基調とした既存の国際経済法秩序に生じつつある構造変動を精確に把握し、来るべき新たな法秩序像を再構想することにある。研究は主に3つの課題から構成され、具体的には、(1)「ルールの性質変化」の解明、(2)「法秩序の妥当基盤の変容」の解明、(3)「法の形成原理の変容」の解明からなる。 本年は3年計画の初年度として、全体の研究計画のうち、(1)「ルールの性質変化」、(2)「法秩序の妥当基盤の変容」の2つの問題に主に焦点をあて、関連する文献の渉猟・精読、または関連する判例研究をおこなった。 以上の成果として、査読付の連載論文(「国際経済法秩序の動態と相互主義の論理」(1)(2・完)『早稲田法学会誌』)を公刊するとともに、当該成果にもとづき博士論文執筆計画を一部変更し、内容をブラッシュ・アップしたうえで、博士学位論文として完成させ、2018年2月に早稲田大学に提出した(「国際経済法秩序の動態」)。 こうした成果に加えて、上記判例研究の過程で、裁判手続上の重要な論点を発見し検討する機会を得た。本研究との関連性は必ずしも高くはないものの、国際紛争処理研究の文脈では重要な論点であると考えたため、この点につき別途研究をおこない、学会誌に投稿し、その結果査読論文として公表された(「WTO紛争処理におけるmeasure概念の展開―国際通商における『法の支配』の射程―」『国際経済法学会年報』)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「ルールの性質変化」の解明に関しては、一次資料(条約規定・裁判例)および二次資料(著書・論文など)の双方から、自説を説得的に展開するうえで必要となる証拠・理論を得ることができた。 (2)「法秩序の妥当基盤の変容」の解明に関しては、国際経済環境(法の現実的基盤)の変化、および、国際社会の規範意識(法の理念的基盤)の変化という、2つの側面から分析をおこなった。とりわけ法の理念的基盤の変化においては、関連する先行研究が、質的にもまた量的にも、当初想定していた以上の拡がりをもって存在していることが分かり、まだ分析の途上ではあるものの、自説の構築・展開に際して重要な示唆を得ることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、(3)「法の形成原理の変容」の解明に特に焦点をあて研究をおこなう。我が国ではこうした観点の研究はいまだ発展途上であり、関連研究はもっぱら欧米中心でおこなわれている感がある。そのため次年度以降は海外における研究活動(意見交換・報告)にも注力する。 なお、国際経済法秩序を再構想するに際しては、「市場というものに対して法がいかに構えるべきなのか」という、法と経済の関係に関する根本問題について何らかの考えを構築し提示しなければならないのではないかと考えるに至った。そのため、今後本研究を推進していくにあたっては、以上の規定的な問題の存在も念頭におきつつ、具体的課題に対処していく予定である。
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