2017 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟空気圧シリンダを用いた低コスト・可搬型上肢リハビリ機器の開発
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17J09802
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
松井 保子 岡山理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 柔軟空気圧シリンダ / 球面アクチュエータ / 3次元位置計測システム / ロボティクス・メカトロニクス / 流体制御機器 / ホームリハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会を迎え,リハビリ機器やパワーアシスト装置の開発が盛んに行われている.本研究では,以前に2つの柔軟空気圧シリンダをリング状に曲げ直角に交差させて構成した球面アクチュエータを試作し,手に持って腕や肩などのリハビリテーションを行うための可搬型上肢リハビリテーション機器へ応用した.本年度は,アクチュエータの保持ステージの相対位置を計測する3次元位置計測システムを提案・試作し,試作システムを搭載した機器の制御について検討した.計測システムは,同一平面上の異なった位置に配置した3つのワイヤ式リニアポテンショメータから構成される.各設置点から同一の計測点(x,y,z)までの距離を測ることで,幾何学的な関係から3次元座標を知ることができる.ワイヤ式リニアポテンショメータは,本研究で開発した安価なワイヤ巻き取り式のリニアポテンショメータであり,材料費は1000円程度と安価である.このポテンショメータは10回転分を計測できるヘリカルポテンショメータと,板バネによるワイヤ巻取り機構から構成され,10bitのA/D変換器を介した検出分解能は0.45mmである.また,各ワイヤは計測位置で結合されている.このシステムを搭載したアクチュエータを,試作システムの出力電圧より算出された保持ステージ座標と事前に設定された目標値との偏差を求め,各シリンダ変位をx,y方向で独立して制御する.また,座標データはシリアル変換モジュールを介し,PCで記録する.ここで,シリアルデータの送信を含めた制御のサンプリング周期は5msである.実験より,シリンダの摩擦の影響と思われる偏差はあるものの,座標計測によるステージ部の位置決め制御が実現できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究成果は,当初の計画通り,ゼンマイによるワイヤ巻き取り器と多回転可能なヘリカルポテンショメータを用いた安価なワイヤ式リニアポテンショメータを開発し,このワイヤ式リニアポテンショメータを3つ使用し,三点測量の原理から3 本のワイヤの先端座標を求めることができる装置を開発した.さらに,この3次元座標計測装置をコンパクト化し,柔軟空気圧シリンダを2本用いた球面アクチュエータから構成される可搬型上肢リハビリテーション機器に組込み,その保持ステージの座標データをフィードバックすることで、機器の姿勢制御を行うシステムを構成した.また,上述の研究成果を,福岡とアメリカで開催された2つの国際会議で発表し,さらに,専門分野である国際ジャーナルに投稿し,掲載が決まっている.
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Strategy for Future Research Activity |
家庭で利用できるリハビリテーション機器を開発するにあたり,流体圧力源の確保は大きな課題である.現状では小型のコンプレッサの開発などが進められているが,未だ吐出圧力が高く,長時間駆動できるようなものは開発されていない.そこで,家庭で身近に確保できる圧力源として,水道圧に注目する.水道圧を使用する場合,防錆性を有するステンレス製の弁が必要となるが,これらの弁は概して高価である.そこで,以前に所属研究室で開発した屈曲チューブを用いたサーボ弁を用いる.弁は屈曲させた2本の軟質ポリウレタンチューブと2種類のチューブコネクタ,小型RCサーボモータから構成される.モータが時計回りに回転すると給気ポート側のチューブの屈曲角がゆるみ,管路断面積が増えると同時に,排気側チューブはさらに屈曲を生じ,完全に閉じられる.また,反時計回りに回転すると給気側が閉まり,排気側の管路断面積が増加する.これにより,給気・排気両方の流量を制御することができる.また,内部に腐食を生じるような部品を使用していないため,気体だけでなく,液体の流量制御も可能である.動作流体に空気を用いた場合,弁の最大流量は約60 l/minと現在使用しているON/OFF弁から構成される疑似サーボ弁(約30 l/min)より大きく,球面アクチュエータなどの姿勢制御に十分適用可能である.本年度は,この弁を球面アクチュエータに組み込んだ一体型の上肢リハビリテーション機器を構成し,さらに水道圧による機器の姿勢制御も行う予定である.以上の研究成果を,国内外の学会にて発表する予定である.
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Research Products
(4 results)