2017 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカル的分子間C-C結合形成を鍵とする核酸系天然物の収束的合成戦略の開発
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17J09814
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤野 遥 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 核酸系天然物 / 全合成 / ラジカル反応 / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、私は、前例の乏しい、炭素-酸素二重結合(C=O)結合への分子間ラジカル付加による炭素-炭素(C-C)結合形成反応の開発研究に挑戦した。従来のアルデヒドへの分子間ラジカル反応は、C=O結合への付加で生じるオキシルラジカルの不安定性さゆえ逆反応が優先し、効率性を欠く。私は、Et3Bがラジカル開始剤およびLewis酸双方としての性質を併せ持つことに着目し、本反応形式を実現した。すなわち、4-グルコサミン由来のα-アルコキシアシルテルリドと、マンノース由来の脂肪族アルデヒドの組み合わせに対して、空気雰囲気下、Et3Bを作用させると、オキシルラジカルがホウ素原子で捕捉され安定化されたホウ素アルコキシドを経て、10連続不斉中心を有する第2級アルコールを、高立体選択的に1工程で得た。本化合物の全立体化学は、高酸化度天然物ヒキジマイシンのC1‒C11主骨格と完全に一致する。この結果は、先に実現した反応形式が、ヒキジマイシンを始めとする様々な高酸化度天然物の迅速な収束的全合成に適用可能であることを実証する、極めて画期的な研究成果である。加えて、私は、適切なアルミニウムないしホウ素Lewis酸を添加することで、芳香族アルデヒドへの分子間ラジカル付加反応をも実現し、受容体となるアルデヒドの適用範囲を拡大した。本年度において彼が達成した研究成果は、生物活性天然物にとどまらず、機能性有機分子を含めた様々な分子の合成に適用できるため、精密有機合成化学を刷新する革新的な方法論となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
量論量に制限された脂肪族アルデヒド上への分子間ラジカル反応の開発に成功した。開発した反応を高度に酸素官能基化された糖由来のラジカルドナー・アクセプターの組み合わせに対して適用することで、高酸化度核酸系天然物ヒキジマイシンの炭素鎖主骨格の収束的な構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に合成した合成中間体から、糖構造および核酸塩基部位の導入を経て、ヒキジマイシンの全合成を達成する。本分子間ラジカル付加反応による合成戦略のさらなる適用可能性を実証するため、同様の戦略に基づき、核酸系天然物カプラザマイシンの全合成を行う。
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