2017 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属協働触媒による還元的クロスカップリング反応の開発
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17J09904
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀山 亮平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 水素化カップリング / 還元的クロスカップリング / 水素 / パラジウム / 銅 / 芳香族ハロゲン化合物 / アルケン / アルキン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,研究実施計画に基づき「水素を還元剤として不飽和化合物から有機金属反応剤を効率的に発生させる手法の開発」を中心に研究を進めた。 有機金属反応剤と炭素求電子剤のクロスカップリング反応は,有機分子の基本骨格を構築する上で信頼度の高い方法である。しかし一般的にクロスカップリング反応では有機金属反応剤の事前調製を含む多段階の操作が必要であり,反応後には金属反応剤に由来する化学量論量の金属塩の副生成を伴う問題がある。一方,系中で発生させた有機金属反応剤を求核剤として用いる還元的クロスカップリング反応は,入手容易な原料から短工程で炭素-炭素結合形成を行える上,特に還元剤として水素を用いた場合には金属塩の副生成も触媒量に低減できることから,クロスカップリング反応の一つの理想形である。このような反応例は少なく,水素を還元剤とする還元的クロスカップリング反応の過去の報告例において求電子剤はケトン,アルデヒドやイミンに限定されていた (Acc. Chem. Res. 2007, 40, 1394)。 このような背景の下,すでに反応の進行を確認していた内部アルキンとヨウ化アリールの水素化クロスカップリング反応については,反応条件の最適化と基質適用範囲の精査を行い,得られた成果を論文として発表した(Chem. Lett., 2018, 47, 213)。これまで芳香族ハロゲン化合物を求電子剤とする水素化カップリングにおいては,用いることのできる求核剤前駆体の適用範囲が狭いことが問題であった。例えば基質として非対称なアルキンやアルケンを用いた場合には目的生成物の位置選択性が低く,異性体混合物が生じていた。反応条件及び基質の検討を行った結果,βメチルスチレンを用いた場合には95%以上の良好な選択性でベンジル位にアリールが導入されたヒドロアリール化体が得られることを見つけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した,水素を還元剤として不飽和化合物から有機金属反応剤を効率的に発生させる触媒系の探索の結果,銅/パラジウムの協働触媒系またはパラジウム触媒が目的クロスカップリング反応の進行に有効であることがわかった。さらなる高活性化および基質適用範囲の拡大を目指して,パラジウムや銅触媒以外の水素化触媒能が知られている金属触媒及び類縁体についても検討を行ったが,目的クロスカップリング反応の進行は確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き脂肪族アルキル置換型アルケン及びアルキンを基質とした水素化クロスカップリング反応のための触媒構造の探索を行う。そこで得られた触媒候補構造においてトランスメタル化の促進が目的反応の進行に重要と考えられる場合,配位子をリンカーまたは静電相互作用によって近接させることで活性化障壁を下げるような触媒構造の改良を検討する。
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