2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Production of Locality in Refugee Camps
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17J09937
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村橋 勲 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 難民キャンプ / コミュニティ活動 / 帰属意識 / NGO / 南スーダン難民 / ウガンダ / ケニア / モニョミジ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウガンダやケニアなど周辺国に離散した南スーダン難民が、難民キャンプでいかにローカリティを生産し、また、帰属意識を形成しているかを明らかにすることである。 平成29年8~9月に行った調査では、難民支援NGOが行うコミュニティと個人世帯の能力の査定、農業および生計支援、支援の結果を調査した。その結果、現状の生計支援活動は、難民居住地内における集団間の差異化と資源の不均等な配分を招く可能性があることがうかがわれた。一方、南スーダンのモル人が自主的に組織したNGOやCBOを調査したところ、こうした組織は、南スーダンの故郷と密接な関係を維持しており、指導的な立場にある男性を中心に、難民居住地内に教会や集会所、保育施設などの公共施設を整備していることが明らかになった。公的な生計支援が難民のビジネスに特化した支援である一方、モル難民が自主的に組織したNGOやCBOは共同体全体として現金稼得機会の創出や社会的連帯の強化に重心を置いている点に違いがみられた。 一方、ケニアのカクマ難民キャンプに暮らすロピット人とは、特定のインフォーマントに対し、電話とインターネットを通じて、聞き取り調査を行った。このインフォーマントは、2015年に、ロピットの言語、口頭伝承、各モニョモジの歴史の記録と保存を目的としてCBOを立ち上げた人物である。なお、モニョミジとは、南スーダンのイマトン州に居住する複数の民族集団に共通してみられる首長制と年齢体系が組み合わさった土着の政治社会制度を指す。聞き取り調査では、各モニョミジ世代に記憶されている歌と歴史、および首長の系譜に関する情報の収集と整理を行った。また、それと並行して、カクマにおけるロピット難民の教育状況に関するデータ収集と、2018年2月に南スーダンのロピット6集落で行われた世代交代儀礼に関する情報の収集と整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、ウガンダとケニアに暮らす南スーダン人の生計、コミュニティ活動、南スーダン難民への人道-開発支援に関する調査研究を行った。ウガンダの難民居住地における1ヶ月の臨地調査と、ケニアに暮らす南スーダン人のインフォーマントを通しての情報収集は、概ね順調に行われ、期待通りに研究が進展している。 調査結果に関しては、第54回日本アフリカ学会(長野)で口頭発表したほか、『地域研究からみた人道支援』(湖中真哉・太田至・孫暁剛編著)と『国家支配と民衆の力』(宮脇幸生編)にそれぞれ論文を執筆した。また、キリヤンドンゴ難民居住地に暮らす南スーダン難民の「家族」戦略に関しては、ウガンダ-日本二国間交流事業オープンパートナーシップ共同研究の国際シンポジウム(東京)で口頭発表し、その研究報告書であるDiversification and Reorganization of 'Family' in Uganda and Kenya: A Cross-Cultural Analysis(Wakana, SHIINO, Soichiro, SHIRAISHI, & Christine M. Mpyangu 編)に論文を執筆した。一方、ロピットに関する調査の一部は、第26回日本ナイル・エチオピア学会(富山)で口頭発表したほか、『スワヒリ&アフリカ研究』第29号に論文を執筆した。そのほか、南スーダンの紛争をめぐるマスメディアとフィールドワークによる情報の違いについては、『マスメディアとフィールドワーカー』(椎野若菜、福井幸太郎編)に論文を執筆。そして、南スーダンのロピットにおける土着の製鉄技術に関しては、第9回金属の歴史国際会議(BUMAⅨ)(韓国、釜山)でポスター発表を行った。さらに、アウトリーチ活動においても、スーダンに関する映像発表を行うなど、積極的な情報発信に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、引き続き、東ナイル系民族集団ロピットの集落移動史、年齢階梯儀礼、年齢組織、雨の首長(王)に関する神話、歴史、歌といった一次資料の収集と分析を行う。聞き取り調査は、カクマ難民キャンプで形成された市民社会組織、Lopit Wirting Projectのメンバーおよびウガンダや南スーダンに暮らす複数のロピット人をインフォーマントとして行う。また、イギリス、ダーラム大学にあるスーダン・アーカイブやイタリアのコンボニ・アーカイブに所蔵されている、エジプト=イギリス共同統治期におけるロピットの首長や年齢組織に関する一次資料の収集と分析を行う。したがって、海外経費に関しては、ウガンダ、ケニア、イギリスでのフィールド調査を行う予定である。 また、5月のソウル・アフリカフェスティバルおよび7月にブラジルで開催される第18回IUAES(国際人類学・民族学科学連合)で、南スーダン難民の移動や家族戦略に関する発表を行う。国内発表に関しては、日本ナイル・エチオピア学会、日本アフリカ学会、日本文化人類学会を含めた学会および研究会などで研究成果を発表する。 そのほか、南スーダン難民の移動に関しては図書に論文を掲載し、ロピットの年齢階梯システムと雨の首長についてはJournal of Eastern African Studiesに寄稿を予定している。
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Remarks |
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科のアフリカ地域研究専攻のHP
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Research Products
(11 results)