2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J09945
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 勢也 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 自由界面流れ / 格子ボルツマン法 / 適合細分化格子 / GPU / 動的負荷分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の固体粒子を含む混相流の高精度シミュレーションの実現を目指し,本研究では,相界面近傍にのみ高解像度格子を局所的に割り当てる適合細分化格子法の実装と,スーパーコンピュータに搭載された複数台のGPU(Graphics Processing Unit)を用いた大規模並列計算を進めている.本年度は,大規模解析に適した完全陽解法である格子ボルツマン法による混相流解析手法の構築,高解像度格子を動的に計算領域に割り当てる適合細分化格子法の高効率なGPU実装方法の検討,複数GPUで並列計算するための動的負荷分散手法の構築を行った. 格子ボルツマン法による固体物体と相互作用する自由界面流れの計算手法の開発では,乱流計算手法であるCumulantモデルを導入することで,高レイノルズ数の自由界面流れを安定して計算が可能となった.複数GPU実装し,等間隔格子を用いて大規模な自由界面流れの計算を実行した.高解像度の格子を局所的に割り当てる適合細分化格子を導入した単相の格子ボルツマン法の単体GPU実装では,高精度が必要な領域に,高解像度の等間隔格子の塊を配置するブロック構造を用いることで,GPU計算で高い演算性能を達成した.適合細分化格子法の並列計算のための新しい動的負荷分散手法の開発では,一般的に多結晶組織のシミュレーションに用いられるマルチフェーズフィールド法を計算領域の分割に適用することで,GPU間の通信コストの削減に成功した. 本年度の補助金は,パソコン周辺機器の購入,研究成果発表のための学会参加費,および学会参加の旅費に当てられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
混相流解析手法に関しては,当初の研究計画では固体,気体,液体の三相を扱える手法の構築を予定していたが,高レイノルズ数の乱流では格子ボルツマン法による気液二相流の計算が不安定になる問題があった.そこで,気相の流れ場は解かずに液相のみの計算を行い,気液界面で境界条件を与えることで,自由界面流れの計算を可能にした.高レイノルズ数で気液界面が不安定になる問題が解消され,安定して物体を含んだ自由界面流れの計算が可能となった. 適合細分化格子法の実装では,まず,単相の格子ボルツマン法の計算に適合細分化格子法を導入し単体のGPUでチューニングを行った.格子データがメモリ上で連続になるブロック構造にすることで,GPUで高速に計算可能にした.球周りの流れの解析では,均一格子の計算と比較して計算コストを1.3%に,計算時間を5.2%に削減することができた. また,H29年度の計画では当初予定していなかった複数GPU計算に取り掛かることが出来た.適合細分化格子法の並列実装は複雑であるため,気液界面を与えられた速度場で移動させるだけの検証コードの作成を行った.当初予定していた空間充填曲線に基づく領域分割では,各GPUに割り当ててられる小領域が凹凸のある複雑形状で表面積が増加するため,通信コストが多くなってしまう問題が確認できた.そこで,多結晶粒組織のシミュレーションに用いるマルチフェーズフィールド法を適合細分化格子の領域分割へ適用し,計算コストと通信コストの最小化を行える領域分割法を提案した.当初予定していた空間充填曲線よりも提案したマルチフェーズフィールド法による負荷分散は,通信コストを削減することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,格子ボルツマン法による混相流シミュレーションに高解像度格子を局所的に割り当てる適合細分化格子法を導入し,複数台のGPUを用いた大規模混相流解析を行う. まず,昨年度開発した格子ボルツマン法による物体を含んだ自由界面流れの解析に適合細分化格子法を実装し,単体のGPU実装を行う.現在,格子ボルツマン法の単相流の計算への適合細分化格子法のGPU実装は既に完了している.単相格子ボルツマン法のGPUコードを混相流解析に拡張していく予定である. 次に,適合細分化格子法を導入した格子ボルツマン法による混相流計算の複数GPU実装を行う.昨年度から開発を進めている,マルチフェーズフィールド法に基づく領域分割による適合細分化格子計算の動的負荷分散手法を格子ボルツマン法の複数GPU計算に導入する.提案する領域分割法を格子ボルツマン法に導入した後,東工大のGPUスパコンTSUBAME3.0にて実行性能測定,スケーリングの測定を行う. その後,本研究の混相流計算コードの実問題への適用を行う.多数の固体粒子間に形成される液架橋の計算や,瓦礫を含んだ津波の計算などを行う予定である.
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Research Products
(7 results)