2017 Fiscal Year Annual Research Report
イヌ組織球性肉腫に対するAIMのアポトーシス促進機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
17J09962
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 萌菜 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | AIM / 組織球性肉腫 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は抗イヌAIM抗体の作製を行い、それを用いて免疫組織学的検討を実施した。また、イヌAIM恒常発現細胞株を作製し、今後AIMが組織球性肉腫に与える影響に関して検討する材料とした。さらに腫瘍とマクロファージとの関わりに関して多角的に理解するために、同じくマクロファージの産生するタンパク質であり、腫瘍に関連するタンパク質であるアネキシン5についても検討を行った。 具体的には、これまでヒトやマウスでの報告があるように、イヌにおいても組織常在マクロファージがAIMを発現していることを免疫組織化学染色を実施することで確認した。また、ウェスタンブロットおよび共免疫沈降法を用いて、イヌにおいても血中に多量のAIMが存在しており、血漿中ではIgMと結合した状態で存在していることを確認した。さらに、これまで他の動物種での報告がないものとして、qPCRや細胞免疫染色を実施することでイヌでは単球やBリンパ球がAIMを発現していることも確認した。これら血球の腫瘍であるリンパ腫および組織球性肉腫に関して免疫組織学的検討を実施したところ、Bリンパ球の腫瘍であるリンパ腫ではAIMの発現は全く認められなかったのに対し、組織球性肉腫では強いAIMの発現が認められた。このことから、組織球性肉腫の病態にAIMは何らかの影響を与えていると考えられた。 アネキシン5に関しては、qPCRやウェスタンブロットによる増殖マーカーの探索により、乳腺腫瘍に対して細胞増殖抑制作用を持つことが示された。このことから、マクロファージが腫瘍の増殖に影響を与えていることが明らかとなり、今後組織球性肉腫の増殖にも何らかの影響を及ぼしている可能性があると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も懸念していた抗体作製に関して、本年度中に作製が完了したため、本年度の後半は抗体を用いた実験を実施することができたことがもっとも大きな勝因であると考えている。ただし、組換えタンパク質の作製が思うように行かず、回収に手間取っている。そのため、組換えタンパク質を用いて実施する予定であった研究に関してはあまり進行していないが、その分抗体を用いた研究を行うことができた。さらに、抗体ができるまでの間に必要なサンプルをある程度集めることもできたため、抗体が準備できてからスムーズに研究に用いることができた。以上の理由から、総合的に判断し、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は組織球性肉腫の病態とAIMとの関わりに関して、さらには組織球性肉腫の治療に応用するために治療ポイントとなるものを探索していきたいと考えている。 具体的には、他の研究室から組織球性肉腫のサンプルをお借りし、免疫学的検討を実施する。AIMがどのような病態と関連があるのか、予後や転移との関わりがあるのか、壊死やアポトーシスと関わりがあるのかと言った点について検討予定である。さらに、今年度作製した恒常発現細胞株を用いてマウスに移植し、通常の組織球性肉腫とAIMを恒常発現した組織球性肉腫とで腫瘍の進行に違いが生じるのか、腫瘍サイズや転移の有無、浸潤度合いの違いなどについて検討する。治療ポイントに関しては、AIMの組み替えタンパク質を用いてAIMの受容体を探索する。組織球性肉腫の膜画分を抽出し、免疫沈降法により同定する予定である。
|