2017 Fiscal Year Annual Research Report
Formation of Western Charitable Society: reconstructing modern Religio-Economic history
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17J10011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 俊毅 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 経済倫理 / 慈善 / 西洋思想史 / キリスト教史 / 社会史 / 近世史 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国での再配分活動は、先進国の数値を比較するに、非国家による慈善も国家の社会保障も双方が低水準である。一方先進各国で前者が盛んなのは英語圏の国々だ。この慈善文化の背景には如何なる社会的論理があるか。この慈善をも含むような包括的な経済倫理思想のあり方について歴史的に捉えることが本研究の目的である。そして最終的には本邦の内的な社会論理から如何にそこに接合し得るか探求し、先述の貧弱な状況の改善に寄与したいと考える。 上述の歴史的考察では、宗教という領域が経済社会に独立的影響を与え得るか、というマルクス・ウェーバー論争の核心を引き継ぎつつ、日本社会の宗教性や社会性においても比較検討できるようなフレームワークを、ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理』で描かれた宗教=経済史のアイデアを発展的に再構築することで組み上げる。 報告者は、採用前から引き続いてジョン・ウェスレー研究を継続し、また宗教改革者らや同時代ローマ・カトリック指導的思想家などの思想検討を行なっている。これに加えて、一般的枠組みの理論化を進めて我々現代人が直面する現象をも射程に収められるようにするために、現代社会の動態における宗教的現象を取り上げ、従来扱ってきた歴史的対象(近世イギリスのもの)と通底した骨格を取り出し、合わせてその理論的対照概念を構築して、統一された理論的概念間の変化として変遷を記述できるようにした。 このような理論的言語の構築のみならず、対象地域・時代における具体的な人々・組織の活動に根差した研究をも図っており、初年度分の研究奨励費を渡航費・宿泊費に充てて、「ピューリタン」らの築いた米国ニューイングランド地域を訪問し、半月ほどの間に現地特殊史料の収集に当たった。これにより、ごくローカルな地域史史料や、特定教会やチャリティ組織の百年以上に渡って蓄積された管理者記録文書といった、様々な資料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この初年度には、対象として優先度の高く当初の初年度訪問予定地であった英国に代えて、国際学会の開催地・会期との兼ね合いを考慮した結果として米国ニューイングランド、主にはボストンを先に訪問するよう計画変更した。 これ自体による進捗速度の変化は想定できたが、現地調査の結果、まずアクセス可能な私史料が期待していた範囲でも下位の割合であったことに加え、そもそも対象年代の史料保存状況自体が期待ほどではないことが判明した。調査対象は公文書館を趣旨としており、「アメリカ合衆国」が独立直前から独立間もない時期だったということもあってまだ行政的な文書管理も然程進展していなかったためだろうが、当時としては米国内では先進地域だった筈の地域でこの程度とは、半ば失望を禁じえないところであった。 またこの結果として組織的資料を主に入手したが、これらの史料から引き出せるものは、報告者の本分たる思想研究を大きく離れがちになり、より純粋に歴史学的である地方史分野の研究に向かってしまうことになる。このような領域はあくまで補助として位置づけており、核は別にあるため、結果としてアウトプットにも遅滞が生じることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度では、本来の優先訪問先であったイギリスに調査に行く。ボストンにては、良質の史料と判断するものも公文書館ならぬ場から発見したが、このような史料を見出す職業的感覚をより磨かなければなるまいが、そのような意味ではニューイングランドに先に訪れたことは、経験の蓄積上かえって良かったとも考えている。この経験をロンドン等でも生かしたい。 ボストンでの史料残存模様同様に、ロンドンでも想定以上に組織資料に偏ることは考えられるので、これを補う当面の方策が必要となる。ひとまず、従来の思想家研究、特にウェスレー研究への比重を高め書簡資料の精査に重点を置くことを考えている。
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Research Products
(2 results)