2017 Fiscal Year Annual Research Report
MOF-金属ナノ粒子間の電荷移動による電子構造制御
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17J10102
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青山 良正 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | metal-organic framework / 金属ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で追求する対象は大きくわけて2つある。1つは、金属イオンと有機配位子の架橋により作られる金属有機構造体(MOF)を、粒径数nmの金属ナノ粒子に被覆させることで得られる複合体、ナノ粒子@MOF内部のナノ粒子-MOF間で起こる電荷移動を制御するための条件の探索である。2つめは、電荷移動に基づく金属ナノ粒子の物性、特に触媒反応性制御のための指針の確立である。 初年度は、触媒性能に優れ安定性を持った白金族の金属ナノ粒子の表面にMOFを被覆した複合体を作成し、その触媒活性を調べることを目標とした。触媒反応は、工業的に有用であり白金族元素が得意とするCOガスの酸化還元反応を選択した。 本年度は白金族元素の中でもRhに注目し、粒径約5 nmのRhナノ粒子の表面にZr系のMOF, UiO-66を被覆することで複合体Rh@UiO-66を合成することに成功した。このRh@UiO-66はRhナノ粒子単体と比較してCOの水素化反応の触媒活性において大きな変化が見られた。具体的には、フローガス中のCO転化率が単体Rhナノ粒子で約3 %だったのに対し、Rh@UiO-66では90 %超に増加していた。また、生成物中のメタン生成率が約 80 %から約100 %になっており、選択性の観点からも顕著な変化が見られた。 Rh@UiO-66で見られた触媒性能変化の原因を調べるためにX-ray photoelectron spectroscopy (XPS)により複合体の表面電子状態を調べると、Rhナノ粒子の表面がわずかに酸化されていることを示す結果が得られ、ナノ粒子-MOF間の電荷移動が触媒活性変化の原因であることを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究進捗の遅れは、主に新たな複合体の合成法の確立に当初の予定よりも多くの時間を要したことによる。 Rhナノ粒子にMOFを被覆した複合体を1種類合成するのに約3ヶ月の時間を要するほか、触媒活性や電荷移動の有無を測定するためにも約1ヶ月の時間を要するため、複合体を上手く合成できないナノ粒子とMOFの組み合わせがあることと併せ、本年度の当初に予定していたように多くの種類のMOFを用い手の複合体合成が困難であることが判明した。そのため、本年度において合成に成功したRh@UiO-66を中心に合成法の改善、ならびに触媒活性測定を行う方針に切り替えた。 また、本年度当初はCu・Fe・Crのような複数の酸化数を取ることのできる金属イオンをもつMOFを優先的に複合材料としていたが、この際に触媒反応条件に耐える熱安定性の高い複合体の合成をすることができず、多くの時間を合成に割くことになった。この問題は、熱安定性の高いUiO-66にMOFを変更することで解決した。 以上の結果から、当初予定していたような放射光測定施設を用いた複合体の構造解析や九州大学の電子顕微鏡施設を使うことができず、次年度以降に延期することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得た複合体、Rh@UiO-66で見られた触媒活性変化の原因を調べるとともに、Rh以外の白金族元素に展開することで系統的な研究を行う。 Rh@UiO-66については、電荷移動がどのようにRhの触媒活性変化に寄与しているかが未だ不明な状態である。そのため、国内外の実験室を用いることで、COガスを触媒に流し、反応が進行している状態でRhナノ粒子表面の状態をIR測定やXPS測定などにより調べるオペランド測定を行うことで、触媒機構を深く理解することを目指す。その上で、現在用いているMOFのUiO-66の有機配位子の長さを変える。金属イオンをZrからHf, Ceに変えるなどの変化を加えることで、MOFの構造、ならびにナノ粒子とMOFの金属イオンの組み合わせがどの程度電荷移動現象に影響を与えるのかを調べる。 Rh@UiO-66とは違う複合体を合成する上で、周期表上でRhと隣接するRu, Pdを用いた複合体の合成を試みる。Ru, Rh, Pdは三種ともCOの水素化触媒活性をもち、その主成分は金属元素によって異なる。Ruは炭化水素、Pdはメタノールの生成能力に優れることが知られている。これら二種の金属ナノ粒子を作成し、Rhナノ粒子と同様に複合体化した際に金属ナノ粒子のCO水素化能力に現れる変化、そして電荷移動現象の有無を調べることで、系統的に金属ナノ粒子-MOF間の電荷移動現象を制御するための指針を確立することを目指す。
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