2017 Fiscal Year Annual Research Report
Hybrid mackerel possesses germ cell-deficient sterile gonads: Its suitability as a surrogate recipient for gamete production of bluefin tuna.
Project/Area Number |
17J10156
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
川村 亘 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | クロマグロ / 代理親魚 / 生殖細胞 / 生殖細胞移植 / 雑種 / 雑種不妊 / サバ / スマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の最終目的は、生殖細胞の移植技術を用いて、クロマグロの配偶子をサバなどの小型近縁魚種に生産させることである。この目的達成に向けて、本研究ではサバとスマを宿主候補として、不妊宿主の開発を目指した種間雑種の作出および不妊雑種へのマグロ生殖細胞移植に取り組んでいる。 これまでの研究で、すでにサバ雑種が生殖細胞欠損不妊になることを見出している。そこで平成29年度は、このサバ雑種へマグロ生殖細胞を移植し、サバ雑種生殖腺内におけるマグロ生殖細胞の挙動を追跡することで、サバ雑種がマグロ生殖細胞を取り込み、維持、増殖させることが可能であるかを解析した。その結果、サバ雑種がマグロ生殖細胞を高効率で取り込むことが可能であるうえ、一部の個体においてはマグロ生殖細胞を生着時の15倍以上に増殖させていたことを明らかにした。 さらに上記の移植実験に加え、スマ不妊雑種の開発にも着手した。同属内での交雑により生残性かつ不妊の雑種が得られたサバ雑種の成功例から、スマと同じスマ属に着目し、大西洋に生息するタイセイヨウヤイトおよび東太平洋に生息するBlack skipjackをそれぞれブラジルおよびパナマで採集し、凍結精子の作製および日本への運搬を試みた。 ブラジルでは現地漁師の協力のもと、定置網漁によって漁獲されたタイセイヨウヤイトから精液を採取し凍結精子を作製することに成功した。また、パナマではトローリングによってBlack skipjackを釣獲し、採取した精液を用いて凍結精子を作製することに成功した。さらに、これら2種の凍結精子を用いて当研究室で飼育しているスマとの人工授精を実施した。その結果、スマ×タイセイヨウヤイト雑種およびスマ×black skipjack雑種はスマと同様に発生が進行し、孵化仔魚を得ることに成功した。現在、このスマ雑種を飼育中で来年度にも妊性が明らかになる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴマサバ×マサバ雑種からのクロマグロ配偶子生産を目的とした移植実験では、本研究により初めて、移植されたマグロ生殖細胞がサバ雑種生殖腺内で増殖していることを明らかにした。ただし、マグロ生殖細胞を増殖させていたのは一部の個体のみであり、増殖効率の改善に取り組む必要がある。これまでの結果から、ドナーに用いるクロマグロ精巣は成熟精巣よりも未成熟精巣のほうが、移植後のクロマグロ生殖細胞の生残および増殖が良好であることが示唆されている。そこで今後は、ドナーに用いるクロマグロの年齢や精巣の成熟度を検討することで、効率よくクロマグロ配偶子を宿主生殖腺内で増殖させることが可能になると期待される。 また、スマ雑種の作出計画においては、最も困難を極めると予想されていた海外でのタイセイヨウヤイトとBlack skipjackのサンプリングおよび凍結精子の作製を達成した。さらに、この凍結精子と当研究室で飼育しているスマを用いた人工授精によって、スマ×タイセイヨウヤイト雑種およびスマ×Black skipjack雑種を作出し、2種のスマ雑種が生残性であることを明らかにした。現在、このスマ雑種を飼育中であり、経時的なサンプリングと生殖腺の組織観察による妊性解析を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1歳齢になったサバ雑種移植魚へ生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を投与することで催熟し、ドナー由来のクロマグロ配偶子を生産しているかを調べる。移植魚から配偶子が得られた際には、種判別PCRおよび交配試験によりクロマグロ配偶子か否かを確認する。また、成熟度や採取時期の異なるクロマグロ精巣をドナーとしてサバ雑種へ移植し、より効率的に移植魚生殖腺内で維持、増殖、分化することができるドナー精巣の条件を模索する。一方、不妊スマ雑種の作出を目指した計画では、現在飼育中のスマ♀×タイセイヨウヤイト♂雑種およびスマ♀×black skipjack♂雑種における生残性および妊性の解析を行う予定である。具体的には、飼育期間中の生残および成長を記録し、生残性の雑種であるかを調べると共に、経時的にサンプリングを行い、生殖腺の組織学的な観察および減数分裂マーカー遺伝子や配偶子形成マーカー遺伝子を対象とした遺伝子発現解析によって、スマ雑種生殖腺の発達を調べる。飼育環境下のスマは満1歳で雌雄共に成熟するため、1歳齢になった時点で両スマ雑種へGnRHaを投与し、配偶子生産の有無によって最終的に不妊化しているかどうかを判断する。両雑種のうち不妊化した組み合わせについては雑種種苗の大量生産を実施し、得られた雑種仔魚へクロマグロの生殖細胞を移植する。移植後は、飼育期間中に経時的なサンプリングを実施し、生殖腺の組織観察やクロマグロ特異的に検出可能なRT-PCR解析および免疫組織学的な解析によって、移植したクロマグロ生殖細胞の増殖および分化を観察する。その後、移植魚を1歳齢まで飼育し、スマ雑種がクロマグロ配偶子を生産することが可能であるかを明らかにする。
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