2018 Fiscal Year Annual Research Report
Hybrid mackerel possesses germ cell-deficient sterile gonads: Its suitability as a surrogate recipient for gamete production of bluefin tuna.
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17J10156
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
川村 亘 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | クロマグロ / 代理親魚 / 生殖細胞移植 / マサバ / スマ / 早期催熟 / 不妊雑種 / 雑種強勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々はクロマグロ生殖細胞を移植した120日齢のサバ雑種宿主の生殖腺内でクロマグロ生殖細胞が生残し、一部の移植個体においては生着時の15倍に増加させていたことを明らかにしている。このことから、サバ雑種移植魚を120日齢で成熟させることが可能となれば、クロマグロ配偶子の生産が可能になるのではないかと考えた。そこで本年度は、通常1年で成熟するサバを120日齢で成熟させる早期催熟技術の開発に着手した。その結果、マサバを成熟期の水温(18-20℃)を維持して孵化直後から飼育し続けることで、120日齢で精子を生産する個体が出現することを見出した。具体的には、自然水温区(18℃から26℃まで徐々に増加)における精子形成個体率が14.2%(1/7)であったのに対して、早期催熟区(18℃~20℃に維持)の精子形成個体率は72.8%(8/11)であった。今後はマサバで実証された本技法を、クロマグロ生殖細胞を移植したサバ雑種へ応用し、120日齢で成熟させることでクロマグロ精子の生産が可能であるかを検証する。 さらに、本研究課題ではスマをメス親魚としたスマ不妊雑種の開発にも着手している。これまでに我々は、タイセイヨウヤイトの凍結精子を用いた人工授精によって、スマ×タイセイヨウヤイト雑種(スマ雑種)の孵化仔魚を得ることに成功している。そこで本年度は、このスマ雑種の仔稚魚期における成長・生残特性について解析した。その結果、スマ雑種が雑種強勢により仔稚魚期において、野生型スマよりも高生残・高成長を示すことが明らかになった。これまで、仔稚魚期の初期減耗が著しく移植魚の大量生産が困難であったスマにおいて、本雑種の持つ優れた成長・生残特性はクロマグロ用宿主として大きな利点となる。今後は、このスマ雑種宿主へクロマグロ生殖細胞を移植することで、クロマグロ配偶子を生産する代理親魚の作出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の研究計画通りの進展が得られている。これまでに、120日齢のサバ雑種生殖腺内でクロマグロ生殖細胞の増殖および生残が確認されている。このことから、120日齢でサバ雑種を成熟させることでクロマグロ配偶子の生産が可能になるのではないかと考え、通常1年で成熟するサバを成熟期の水温を維持して飼育することによって、120日齢で成熟させる手法を開発した。今後は、クロマグロ生殖細胞を移植したゴマサバ×マサバ雑種へ本技法を応用し、ゴマサバ×マサバ雑種を120日齢で催熟することでクロマグロ配偶子の生産が可能になることが期待される。また本成果は魚類育種における世代促進技術としての展開も見込まれる。さらに、スマ雑種宿主の開発を目指した研究では、スマ×タイセイヨウヤイト雑種が雑種強勢により仔稚魚期において通常のスマと比べて高成長・高生残を示すことを明らかにした。これは、仔稚魚期の初期減耗が著しいスマにとって、クロマグロ用宿主として非常に優れた特性である。現在、クロマグロ生殖細胞を移植したスマ雑種を飼育中であり、1歳齢になった時点でサンプリングを実施しクロマグロ配偶子を生産しているかを解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマグロ生殖細胞を移植したゴマサバ×マサバ雑種へ早期催熟法を応用し、120日齢でクロマグロの精子を生産可能であるか検証する。具体的には、早期催熟を施した120日齢のサバ雑種移植魚へ生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を投与し、ドナー由来のクロマグロ精子を生産しているかを調べる。移植魚から精子が得られた際には、種判別PCRおよび交配試験によりクロマグロ精子か否かを確認する。また、最近我々はクロマグロ特異抗体を用いて移植魚の精液中からクロマグロ精子を特異的に検出する精子免疫染色法を開発している。そこで、サバ雑種移植魚から得られた精子を本免疫染色へ供し、クロマグロ精子の生産効率を明らかにする。一方、スマ雑種によるクロマグロ配偶子の生産を目指した計画では、現在飼育中であるクロマグロ生殖細胞を移植したスマ×タイセイヨウヤイト雑種の経時的なサンプリングを実施し、生殖腺の組織観察やクロマグロ特異的に検出可能なRT-PCR解析および免疫組織学的な解析によって、スマ雑種生殖腺内でのクロマグロ生殖細胞の増殖および分化を観察する。その後、移植魚を1歳齢まで飼育し、スマ雑種がクロマグロ配偶子を生産することが可能であるかを明らかにする。また昨年度、新たなスマ雑種宿主候補としてスマ×ヒラソウダ雑種が生残性雑種である可能性を見出している。そこで、今後は上記の移植実験と並行して、ヒラソウダ天然魚から凍結精子を作製し、メスのスマ親魚との人工授精を実施することでスマ×ヒラソウダ雑種を作出する。スマ×ヒラソウダ雑種が作出できた場合は妊性およびクロマグロの宿主として利用可能であるかを調べる予定である。
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Research Products
(4 results)