2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J10208
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三村 和仙 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 抗電界の膜厚依存性 / ハフニア基強誘電体 / エピタキシャル膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
HfO2基強誘電体は他の強誘電体と比べて、抗電界が非常に大きく、デバイス応用上では低電圧駆動の観点から不利である。そこで、本研究では抗電界の低下を試みている。抗電界を下げる手段の一つとして、組成の変化が考えられる。これまで、過去の多結晶膜の報告では様々なドーパントをドープしたHfO2基強誘電体の報告が存在したが、これらの膜では劇的な抗電界の変化がみられていなかった。一方で、5価イオンをドープしたHfO2基強誘電体はほとんど知られていない。そこで、バルクで強誘電相の斜方晶相が安定であるTaをドープしたZrO2についてエピタキシャル膜の合成を行い評価した。作製したZrO2膜では斜方晶相由来の(110)超格子反射ピークがみられ、強誘電相が安定化していることが示唆された。一方で、電気特性評価では他のHfO2基強誘電体で十分に強誘電特性が出るような電界を印加しても強誘電特性が得られなかった。これは、他のHfO2基強誘電体に比べ、分極軸と他の軸との格子定数の比が大きく、抗電界が非常に大きい可能性がある。この結果はドーパントにより抗電界を変化させることが可能であることを示すものであり、今後は他のドーパントもしくはTaとの共ドープさせたHfO2基強誘電体の作製を試みたい。 また、膜厚の増加も抗電界の低下に効果的である。従来の強誘電体では膜厚の増加に伴い抗電界が減少することが知られている。HfO2基強誘電体の多くは膜厚の増加に伴い、常誘電相が増加するため、これまで強誘電相単相の抗電界の膜厚依存性の調査は行われていなかった。そこで、エピタキシャル7%Y-HfO2膜を用いて抗電界の膜厚依存性を調査した。従来の強誘電体と異なり、HfO2基強誘電体の抗電界の膜厚依存性は非常に小さいことが観察された。この結果は抗電界を制御するためには強誘電体ドメインの大きさの調整が必要であることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初の予定では、様々なカチオンおよびアニオンを置換した配向制御した強誘電相単相のHfO2膜を作製し、元素置換による材料の特性変化を系統的に調査することであった。前年度の研究の続きとして、単斜晶相のTaON膜にYをドープしたYTaON膜の作成を試みた。Yドープ量を増加させることにより、単斜晶相の格子定数が変化し、あるドーパント量で斜方晶相へ変化した。しかしながら、耐電圧が悪く、強誘電特性の評価には至っていない。また、ZrをドープしたZrTaON系では斜方晶相の作製が困難であった。これらの点から本研究は遅れていると考えられる。 一方で、抗電界の膜厚依存性など、基礎特性の評価では進捗があった。これらの理由より本研究の進捗状況はやや遅れていると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として以下の二つが挙げられる。 一つはすでに作製に成功しているTaZrO2膜に異なるドーパントを加え強誘電特性の変化を試みることである。これまで様々なドーパント(Y, Si, Gd, Zr, Laなど)をドープしたHfO2基強誘電体ではある組成領域のみで強誘電相が得られており、微量なドープ量変化で結晶構造が変化してしまうため、ドープ量の変化(格子定数の変化)による斜方晶相単相の強誘電特性の変化を得るのが難しかった。一方で本研究で作製に成功したTaZrO2膜では幅広いTaドープ量で強誘電相が安定である。このTaZrO2膜ではこのTaドープ量に応じて格子定数が変化する。様々なTaドープ量のZrO2膜に他のドーパントを加えることにより、これまであまり検討されてこなかった、格子定数の変化によるHfO2基強誘電体の強誘電特性の変化を調査することが可能であると考えられる。 二つは当初の予定通り、微細構造の構造変化による抗電界の制御を試みることである。抗電界の膜厚依存性の結果から、微細構造により抗電界が変化する可能性は十分考えられる。 今後は上記の二つの研究について行う予定である。
|
Research Products
(9 results)