2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞初期化マウスを用いた新規がんモデルの作製とその応用
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17J10225
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田口 純平 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 初期化因子発現レベル / 全能性 / 胎盤分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は初期化因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)の発現レベルと初期化細胞の運命制御の関連性を明らかにすることを目的として実施されている。マウス生体内で初期化因子を全身性に発現させることにより発がんが惹起されることが過去に報告されていたことから、まずマウス生体内において初期化因子の高発現を実現させるために、Rosa26およびCol1a1遺伝子座に薬剤依存的に初期化4因子を強制発現可能なES細胞およびキメラマウスを作製した。本マウスにおいて一定期間の生体内細胞初期化を誘導したところ、腎臓において肉眼的腫瘍の形成が観察された。これらの腫瘍は広範囲に出血斑を伴っており、その近傍には胎盤系列細胞の出現が認められた。さらに、これらの腫瘍では複数の胎盤系列細胞関連遺伝子の発現亢進が認められ、生体内における初期化因子の高発現は胎盤系列細胞を多量に含んだ腫瘍の形成を誘導することが示唆された。さらに、腎臓腫瘍を多能性幹細胞培養条件に播種し、複数のiPS細胞様細胞株を樹立した。興味深いことに、このiPS細胞に由来する奇形腫は頻繁に広範囲な出血斑を伴っており、同時に胎盤系列細胞を多量に含んでいた。さらに、このiPS細胞をマウス8細胞期胚にInjectionしたところ、E13.5において胎仔および胎盤への寄与が観察された。以上の結果から、初期化因子高発現によって誘導された腫瘍より樹立されたiPS細胞は、胚体成分だけでなく、胎盤を含む胚体外成分への分化能を有することが示唆された。また、本iPS細胞においてRNA Sequenceを行ったところ、初期発生過程での成体および胎盤へ向けた最初の分化決定において機能的に重要とされる密着接合関連遺伝子(Cld3/6/7等)が顕著に発現上昇していた。今後はこれらの遺伝子群の機能的な解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
指導教員と日々討論を交わしながら、研究の方向性を明瞭化できていることが、本研究の進度にもっとも寄与していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の研究より明らかとなった上記遺伝子群と本iPS細胞の分化能における機能的な関連性に着目して研究を進めたい。本研究によって初期発生過程での成体あるいは胎盤細胞への運命決定に関する新たな分子基盤の解明、iPS細胞誘導技術にもとづいた新規多能性幹細胞誘導法の確立が実現する可能性がある。
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Research Products
(4 results)