2017 Fiscal Year Annual Research Report
Transition of Social Perception on Seismic intensity : investigation using Content analysis methods
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17J10255
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 高志 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 災害情報 / 気象庁震度階級 / 地震 / 津波 / 防災教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「震度」に対する認識の社会的変遷について研究するものであり、順調に進展している。文献や新聞データベースを基にした内容分析の研究を行い、気象庁震度階級が社会にどのように受容されてきたのかについて分析している。 また、本研究では史料を用いた分析のみならず、実社会の住民に対する意識調査も積極的に実施している。特に、高知県幡多郡黒潮町の住民に対して、アクション・リサーチの理論に基づく意識調査を実施している。高知県幡多郡黒潮町は、平成24年に内閣府から発表された南海トラフ巨大地震の想定によると34メートルという日本一の高さの津波高が想定されている。そのため、震度と津波避難の関係性を明らかにすることは、黒潮町における津波防災を実質的に促進することに資する。 さらに、本研究では、海外における地震動の揺れに対する認識も調査している。例えば、メキシコ合衆国ゲレロ州シワタネホ市をフィールドにして、住民に対する意識調査を実施した。シワタネホ市はゲレロ空白域という海溝が存在する沿岸部の都市であり、津波災害が近年懸念されている。そのため、住民に対する地震の揺れについての意識調査をすることは、津波防災を進めていく上で重要な方策と言える。 平成29年度における本研究では、史料の渉猟や住民に対する意識調査などのデータ収集を重点的に実施した。平成30年度は先述のデータを分析し論文化する作業を加速していく。 加えて、平成30年度にはアメリカ地質調査所に渡航し、気象庁震度階級を他国に適応するために必要な要素を検討する予定である。気象庁震度階級の社会的変遷をまとめると共に、次世代の新しい災害情報として、どのような情報が最適なのかについても最終的に提言できるよう研究成果をまとめていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初、新聞やインターネットといった史料を中心とした分析を行う予定だった。それらの史料は、様々な調査によって収集することができた。 平成29年度は、これらの一次資料の渉猟のみならず、高知県幡多郡黒潮町やメキシコ合衆国ゲレロ州シワタネホ市に居住する住民の意識調査を実施することができた。これらの意識調査によって、文献では掲載されていない住民の津波防災・地震防災に対する意識を明らかにすることができた。住民の意識を明らかにすることは、「震度」という災害情報に対する認識が社会の中でどのように変遷してきたかを考える上でも非常に重要な資料になる。また、本研究で意識調査を実施したことで、研究者と住民との間に関係性を築くことができ、本研究の研究成果を論文として出版することのみならず、具体的なコミュニティに還元することができる。そのため、本年度は、当初計画していた以上の研究成果を得ることができたと考える。 平成29年度は、こうした資料の収集に集中してきたが、平成30度はそれらの資料や調査結果を整理・分類し、論文化していく作業に集中する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの研究によって「震度」にまつわる様々な現状が明らかになった。平成30年度には、日本において気象庁震度階級がどのような役割を社会の中で果たしているのかについて、史料や意識調査の成果を用いて、総合的な見地からまとめていきたいと考えている。 加えて、平成30年度にはアメリカ地質調査所に渡航し、気象庁震度階級を他国に適応するために必要な要素を検討する予定である。現在、アメリカにも気象庁震度階級のような即時速報型の災害情報は存在しない。ただし、アメリカ地質調査所では、地球科学研究が先進的に行われているため、気象庁震度階級の問題点を検証する絶好の場であるといえる。アメリカ地質調査所で国際的な見地から、気象庁震度階級の役割や性質を分析する予定である。 平成30年度には、気象庁震度階級に対する認識の社会的変遷をまとめると共に、次世代の新しい災害情報として、どのような情報が最適なのかについても最終的に提言できるよう研究成果をまとめていく。
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Research Products
(10 results)