2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J10262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅谷 将隆 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 環拡張ポルフィリン / 反芳香族性 / 二重らせん |
Outline of Annual Research Achievements |
反芳香族性化合物は、小さなHOMOーLUMOギャップやその酸化還元のされやすさなど、芳香族性化合物にはない新たな機能を発現できる可能性を有している。そこでポルフィリンを基盤とした新たな反芳香族性分子の合成や反芳香族性の性質を生かした機能性分子の創製を目的として研究を行なった。 新たな反芳香族性ポルフィリン類縁体の合成のために、まず最初に末端のα位にブロモ基をもつトリピリンの合成した。このトリピリンは3つのピロール環が2つのメチン炭素で架橋された構造をもつ鎖状の化合物である。また、このトリピリンはポルフィリンの部分骨格と見ることもでき、末端のブロモ基はクロスカップリング反応や芳香族求核置換反応などにより様々な変換反応を行うことが可能である。そのため、今回合成した末端のα位にブロモ基をもつトリピリンはブロモ基を適切な反応により変換し環化させることにより様々なポルフィリン類縁体を合成できると期待できる。実際に、このトリピリンに対し、芳香族求核置換反応により種々の求核剤と反応させることにより、メゾ位にヘテロ原子を導入したポルフィリンやヘキサフィリンを合成することに成功した。ヘキサフィリンは6つのピロール環を持つ環拡張ポルフィリンであり、今回合成したメゾ位に窒素原子を導入したヘキサフィリンは反芳香族性を示し、酸化によって芳香族性へと変換できることがわかった。 また、この研究の過程において末端にアニリンを導入したトリピリンが結晶構造中において水素結合による二重らせん構造を持つ二量体を形成し、溶液中において単量体と二量体の平衡状態にあることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究状況をまとめると以下のようになる。 新たな反芳香族性を有するポルフィリン類縁体を合成し、その物性を測定するだけなく、酸化反応により反芳香族性から芳香族性へと変換できることを見出した。 その合成に用いた前駆体は1年目において合成した化合物に限らず、種々の変換反応により様々なポルフィリン類縁体を合成できることが期待できる有用な前駆体であった。 また、その過程において合成した分子の特異な会合挙動を見出し、詳しく調べた。 以上のことから研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成した反芳香族性分子に対し、種々の金属を錯化させることにより、金属錯体を合成する。得られた金属錯体に対し、NMR、紫外可視吸収スペクトルの測定やx線単結晶結晶構造解析などを行うことにより、金属原子の母核に与える影響や金属原子の違いによる電子的、磁気的摂動の違いについて検討する。また、1年目において合成した末端のα位にブロモ基を導入したトリピリンは新たなポルフィリン類縁体を合成する上で有用な前駆体である。これまでは、主に芳香族求核置換反応を用いて合成を行ってきたが、末端のブロモ基はその他の種々の反応でも変換が可能であると考えられる。今後はクロスカップリング反応を用いた新たな反芳香族性ポルフィリン類縁体の合成も検討して行きたいと考えている。また、ポルフィリンやヘキサフィリンだけでなく、より大きな環構造やより小さな環構造を持つ反芳香族性ポルフィリン類縁体の合成も検討する。
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