2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト多能性幹細胞由来の大脳新皮質組織を用いた霊長類に於ける神経回路の再構築
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17J10294
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂口 秀哉 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | オルガノイド / 神経分化誘導 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の繰越計画で記載した通り、海外における研究基盤立ち上げに、2018年度の繰越分を充てるかたちを取っている。 まず、SFEBq法を用いて3次元での大脳皮質組織の誘導を行った。非血清存在下に神経組織が誘導されることを元に、まずSFEBq法によって神経上皮の誘導を行い、Wnt/BMP阻害剤の添加によりそれらの神経組織を吻側化する事で大脳皮質領域の誘導を行うことで、分化誘導開始後30-40日で3次元のヒト大脳組織を得ることができた。この際に、アメリカでのヒト胚性幹細胞の主要ラインの一つであるH9 cell lineを用い、feeder freeで分化誘導を行い、その再現性が取れることを確認した。 得られた神経組織は当初のin vitro培養条件では培養90日程度の長期培養が可能であり、培養100日前後まで安定して培養できるようになった。免疫染色にて、分化誘導した組織が大脳組織であることを確認し、その層構造形成が発生段階を追うようにして形成されていることを確認できた。日本におけるKhES1の細胞ラインでは、継代間でのばらつきが少なかったが、H9ラインではとても大きく、再現性を担保することが困難であったため、分化誘導をかける際の酵素の種類や、ROCK inhibitorの濃度を含め、様々な条件を検討してみたが、再現性という点ではKhES1を上回る結果は得られなかった。細胞ライン間での分化傾向の違いに加え、継代間でのばらつきまで認めるため、SFEBqそのものは再現できるものの、日本で行うように効率良い再現に関しては、約6ヶ月検討してみたが、達成できなかった。 大脳オルガノイドの移植については、日本の所属先で引き継ぎの上継続して行っており、その指導に関与し、論文作成に深く関わって現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、初めて海外での技術立ち上げに関わった。施設の違い、研究文化の違いなど、多くの異なる環境下で自分の持つ技術を立ち上げることには多くの困難が伴った。そのため、基盤の立ち上げだけでも6ヶ月以上の期間を要してしまい、また、その結果も日本で得られていることに比べて再現性の点で劣る結果であった。細胞ラインの違いや多能性維持のプロトコールの違いなど、多くの検討項目が考えられた点では、自分のもつ技術について、多面的に考える機会になったという点では、進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳皮質組織の3次元での分化誘導系の確立は終了し、げっ歯類への移植とサルへの移植についても一通りのデータは揃っていて、現在論文投稿中である。 げっ歯類への大脳オルガノイドの移植について論文報告があり(Mansour et al.Nat Biotech. 2018)、新規性の観点から報告が難しくなる懸念もあったが、自分がその研究室へ現在長期渡航して確認したところ 、自分たちのデータの新規性・有用性は損なわれていないことがわかったため、このまま論文投稿を着々と進めることとした。現在リバイスで要求された実験を終え、再投稿の準備中である。
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