2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the Mechanism of a Ciliate Swimming: Near a Wall and Under Shear Flow
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17J10331
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 拓也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 生物流体力学 / 微生物遊泳 / 繊毛虫 / 低レイノルズ / 数値計算 / 動物行動学 / 固液境界 / メカノセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
海や池、湖に生息する原生生物の一種、繊毛虫は水中を3次元的に自由に泳ぎ回る一方で、水底や石の表面などの液体と固体の界面付近に多く分布している。この固液表面付近は、餌となる有機物が堆積し、自然界で生じる細胞外の流れによる影響も少ないため、繊毛虫にとって生存に有利な環境であると考えられている。しかしながら、3次元的に遊泳するはずの繊毛虫が、どのようにして2次元平面である固液界面付近に留まっているのかを直接的に明らかにした研究はない。そこで、繊毛虫の壁面付近における遊泳ダイナミクスの特定を試みた。 繊毛虫の一種であるテトラヒメナ(Tetrahymena pyriformis)を平滑な基板上で観察した結果、壁に頭部を押し付けたまま壁面上をスライド運動する性質があることを確認した。遊泳の推進力となっている繊毛の動きを観察したところ、壁面と細胞が接している部分の繊毛がうまく推進力を生み出せていないことが分かった。体の周りの推進力の非対称性がスライド運動の力学的因子であることを証明するため、微生物遊泳モデルを使った流体シミュレーションで検証を行った。先行研究における計算条件ではスライド運動は再現できなかったが、推進力非対称性を取り入れた物理モデルは実際の細胞の角度や速度がよく一致したスライド運動を再現した。さらに実験を再現するための要素として、細胞の形状が楕円体であることも重要な要素であることが分かった。 本研究によって複雑に見える繊毛虫の行動が、推進力非対称性、細胞形状という2つの力学パラメータによる簡単な原理で実装されていることが明らかになった。本研究成果をまとめた論文はPNAS(米国科学アカデミー紀要)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画に記載した2つの研究内容のうちの1つ目にあたる、壁面近傍における繊毛虫遊泳運動の研究を実施し、ダイナミクスを明らかにした。さらに本結果の論文が3月に出版され、研究計画1年目で予定していた内容を完遂できたと言える。さらに、2つ目の研究内容であるせん断流れ下における繊毛虫遊泳運動についての研究も平行してスタートさせている。こちらの内容についても実験と数値計算から既に大まかなダイナミクスの特定は出来ており、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は顕微鏡観察による実験と微生物遊泳モデルを用いた数値計算を重ね、せん断流れ下における繊毛虫遊泳運動についての詳細なダイナミクスを明らかにする。そのほか、当初の予定よりも進展した内容として、平滑でない固液界面付近での繊毛虫遊泳運動に関するマイクロ流体デバイスを用いた実験を予定している。さらに、一細胞の運動から発展させ、特定の境界条件下において高密度の繊毛虫集団が形成する生物対流などの集団運動に対しても実験・理論考察を行う。
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Research Products
(14 results)