2017 Fiscal Year Annual Research Report
STMを用いた固液界面での協同的組織化の解析に基づくアミロイド形成初期過程の解明
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17J10353
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西谷 暢彦 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイド / 自己組織化 / 固液界面 / 協同性 / 走査トンネル顕微鏡 / STM / ジアリールエテン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアミロイド形成メカニズムの解明に向けた基礎的知見を得るために、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた固液界面における協同性評価手法が分子設計の微細な変化を検出できる高感度な手法であることの実証を行った。具体的には、水素結合の強さや向きを変えたモデル分子を設計・合成し、多方向の分子間相互作用が分子配列の形成濃度や配列形状・サイズに与える影響に関して検討を行った。 芳香環コアと長鎖アルキルの間にアミド基もしくはウレア基を持つ棒状化合物2種類に対して、さらにヒドロキシ基を芳香環コア末端に導入した化合物2種類、アルキル鎖末端に導入した化合物2種類の計6種類のモデル化合物を合成した。 化合物のオクタン酸/グラファイト界面での配列形成をSTMで観察した結果、アミド誘導体と比較して、ウレア誘導体は顕著に小さな配列ドメインを形成することが認められた。被覆率の濃度依存性を固液界面における核生成-伸長モデルを用いて評価したところ、ウレア誘導体はアミド誘導体に対して核生成平衡定数が非常に大きく、配列サイズには核生成プロセスが大きく影響していることが示唆された。またモデル解析によって得られた熱力学パラメータより、ヒドロキシ基1個当たりの配列安定化の寄与を定量化でき、本研究での固液界面における協同性評価手法の高感度性が示された。さらに、芳香環コア末端にヒドロキシ基を導入したウレア誘導体のみが、アスペクト比が約10の異方的なドメインを形成した。詳細な検討により、異方的ドメイン成長はウレア基とヒドロキシ基による多方向の水素結合ネットワーク形成に由来することが示唆された。 以上、固液界面での配列形成において多方向の分子間相互作用を適切に設計することで、配列の形状やサイズを制御することができるという興味深い知見を得ることができ、アメリカ化学会のLangmuir誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究者は、平成29年度、固液界面での協同的組織化に関してSTMを用いた解析を行うことで、分子構造の違いが配列形成挙動に与える影響について新たな知見を得ることに成功した。本研究は学術論文として発表を行い、現在は新たな実験系の検討を進めているため更なる研究の発展が期待される。 特筆すべきは、国内・国際学会への積極的な成果発表を行い、第15回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム、第49回構造有機化学若手の会 夏の学校、2017年光化学討論会、日本化学会第98春季年会において最優秀賞2件を含む5件の発表賞を獲得した点である。 以上より、研究がおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
より生体分子に近い相互作用についての知見を得るために、オリゴペプチド鎖をフォトクロミック分子であるジアリールエテン (DAE) に導入し、その固液界面における自己組織化について検討を行っている。合成したDAEは固液界面での配列形成と、溶液中での会合挙動の両方を示す特徴的な系であることが認められ、今後その詳細や光異性化を用いた基板上での1分子識別について検討を行う予定である。
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Research Products
(13 results)