2017 Fiscal Year Annual Research Report
生体の予測性運動制御機構の理解とロボット制御システムへの応用
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17J10497
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
三木 俊太郎 中部大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 運動学習 / 眼球運動 / 小脳 / 金魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体の予測性運動制御学習メカニズムを解明するために,運動学習の一例である金魚の周期同調に着目し,行動実験・生理実験,モデルシミュレーションを用いて周期同調の学習機構を明らかにすることを目的とし研究を進めた.当該年度では,行動実験により周期同調の特性を明らかにすると共に,学習の脳内責任部位を同定することに重点を置き研究を行った. 金魚を用いた予測性眼球運動の周期同調学習において,従来研究では左右両方向に回転するの視覚刺激を学習させることにより,刺激方向切り替わりタイミングを予測して眼球速度が低下するTerminationと呼ばれる成分が生じることが知られていた.本研究では新たに刺激の回転・停止を繰り返す視覚刺激を与えることにより,刺激の動き始めを予測したInitiationと呼ばれる眼球速度の上昇が生じることを初めて示した.このInitiationは通常のゲイン適応では表現することができず,従来知られていたTerminationとは異なる学習メカニズムであると考えられる.また,刺激の回転・停止時間をランダムにした刺激を使用し,InitiationとTerminationがそれぞれ独立に学習することを示した.これらの実験を小脳切除金魚に対しても行い,小脳を切除した個体ではInitiationとTerminationの学習が生じず,学習した個体の小脳を切除すると獲得した学習が消失することを示し,小脳がこれらの予測性眼球運動に必要であることを明らかにした.この結果を元に,周期同調学習時の小脳Purkinje細胞の神経電位計測を実施し,視覚刺激のタイミングに合わせて,神経活動が増減するPerkinje細胞の存在を発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予測性眼球運動の新たな実験パラダイムにより,従来知られていた知見に加え,新たな予測性眼球運動の成分を発見した.また,これら学習の責任部位が小脳であることを明らかにした.さらに学習中の小脳Purkinje細胞活動を計測することで,予測性眼球運動時の小脳の情報表現を明らかにした.このように,次年度に実施予定のモデル構築に必要な学習の特性,神経活動基盤に関する知見を得ることができており,研究は概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得られた行動実験,神経活動記録の結果を元に,数理モデルを構築し計算機上での周期同調のシミュレーションを行う.また,ヒトを用いた周期同調実験を行い,個人間の学習傾向を比較することで,動揺病と視覚刺激の周期性の獲得との関連を評価する.
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