2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機エレクトロニクスデバイスの高性能化を可能にする2次元拡張型π電子系の開発
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17J10525
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 智也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 分子配向 / 有機半導体 / 有機エレクトロニクス / ペロブスカイト太陽電池 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロゲン化鉛を活性層に用いるペロブスカイト太陽電池は、材料の塗布により作製が可能な次世代太陽電池として注目を集めている。本太陽電池の基本的な素子構造は、ペロブスカイト層をp型およびn型半導体層で挟み込んだ構造である。その高効率化には、光吸収層であるペロブスカイト層の作製法の最適化に加えて、生成する電荷を効率的に取り出すための優れた半導体材料の開発が重要である。これまでに、光透過型n型半導体材料として、主に酸化チタンなどの金属酸化物が用いられてきた。しかし、これらの成膜には一般に高温での焼結プロセスが必要であり、フレキシブルなデバイスへの応用には問題がある。 我々は、可視光領域に透明性をもつn型半導体材料としてナフタレンジイミド(NDI)骨格に着目した。本骨格の窒素上の置換基を水素原子にする(NDI-H)ことで、分子間水素結合の形成によって、基板に垂直な方向の電荷輸送に有利なface-on配向を実現できるのではないかと考えた)。塗布による製膜を可能にする前駆体材料として、窒素上に可溶化基としてtert-ブトキシカルボニル(Boc)基をもつNDI-Bocを設計・合成した。本材料の塗布基板を180 °Cに加熱することで、薄膜中でBoc基を脱離させNDI-Hへと変換することが可能である。これらNDI誘導体の薄膜に対して、2D-GIXD(2次元微小角入射X線回折)およびpMAIRS(p偏光多角入射分解分光法)を用いて、分子配向とその変化を評価した結果、Boc基の脱離反応にともなって、基板に対するNDI分子の配向がedge-onからface-onに変化することがわかった。実際に、NDI-H膜を電子輸送層として用いたペロブスカイト太陽電池を作製したところ、10.7%の変換効率が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度から行っていたアゾールを縮環したベンゾチアジアゾールに関する研究について、成果を学術論文として報告(J. Photopolym. Sci. Technol.誌)し、また学会発表(The 34th International Conference of Photopolymer Science and Technology)を行った。 今年度は、ナフタレンジイミドをモデル化合物として分子配向の制御に関する研究を行った。標的化合物の合成、基礎物性評価、pMAIRS法・2D-GIXD法による配向解析、ペロブスカイト太陽電池の作製について、特別研究員が自ら行った。分子間水素結合を利用することで基板に対してface-onの配向を実現できることを見出した。この成果について、国内で2回(IRCCS-JST CREST Joint Symposium, 日本化学会第98回年会)、国外で1回(17th International Symposium on Novel Aromatic Compounds)の学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、水素結合を利用した分子配向制御の有用性を示すモデル化合物として、電子輸送材料として広く用いられているナフタレンジイミドに着目して研究を行ってきた。しかし、分子の次元性という観点から見るとナフタレンジイミドはいわば1次元短冊状の化合物であり、より積極的な分子配向の制御のためには2次元に拡張した分子を用いる必要がある。そこで、今後は2次元三方型の分子を合成し、分子間相互作用を用いた分子配向制御に取り組んでいく予定である。
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Research Products
(6 results)