2017 Fiscal Year Annual Research Report
先史時代西アジアにおける家畜利用の成立とその東方への拡散に関する動物考古学的研究
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17J10562
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
新井 才二 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD) (40815099)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 新石器化 / 偶蹄類家畜 / 西アジア / 中央アジア / コーカサス / 動物考古学 / 家畜の拡散 / 考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、当初の計画通りにトルコ南東部のスマキ・ホユック出土の動物骨(総合研究大学院大学所蔵)、およびアゼルバイジャン西部のダムジリ洞窟、ウズベキスタン南部のカイナル・カマル岩陰出土資料の分析を中心に進めた(ともに東京大学発掘)。 スマキ・ホユックはチグリス川上流に位置する紀元前7,000頃の遺跡であり、当地において最古の土器を伴う新石器集落遺跡である。層位情報こそ未確定であるが、発掘年度との対比から集落が形成された段階ですでに家畜ヒツジ/ヤギ/ブタ/ウシを伴っていたことが判明している。 ダムジリ洞窟では、紀元前6,400年から紀元前5,700年に相当する層が発掘されている。アゼルバイジャンを含むコーカサス地域では、紀元前6,000年頃に最古の農耕村落が出現することがこれまでの研究で明らかになっていたものの、それらがどのようにして成立したのかは不明な点が多かった。これは在地における中石器時代末(紀元前七千年紀後半)に属する遺跡が知られていなかった為である。今回、ダムジリ洞窟ではまさにその時期の様相を明らかにすることに成功した。本研究によって、中石器時代末には家畜動物利用の証拠は一切確認されず、それが紀元前六千年頃を境にして突如として家畜ヒツジ/ヤギ/ウシが出現することが明らかとなった。 カイナル・カマル岩陰では完新世初頭から現代にかけての断続的なシークエンスが得られている。注目したいのは紀元前七千年紀層と六千年紀以降の層の間でヒツジ/ヤギが大幅に増加する点である。つまりここでもこの時期を境にして家畜動物が導入された可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は西アジアから中央アジアまでの広大な地域を対象としている。平成29年度は実地を訪れ、これらすべての地域から出土した資料を分析することができた。特にアゼルバイジャンのダムジリ洞窟の調査では、在地の狩猟採集民が牧畜民へと変化するその時期を完全にとらえることができたため、重要な成果であると言える。結論として、かつて言われていたようにコーカサス地方で独立して動物が家畜化された痕跡は皆無であることが明確となった。 トルコのスマキホユック、ウズベキスタンのカイナル・カマルの調査も予定通りに進展している。前者に関しては層位情報がいまだ不明であるため、その発展の様相を知ることができないでいる。しかし確実な点として、この集落が最初から偶蹄類家畜に大きく依存していたことがある。スマキ・ホユックはこの地域で最古の農耕村落であるから、やはりここでも家畜を連れた農民が移住してきたことが確実となった。 問題は後者のカイナル・カマルである。この遺跡は岩陰であるという点もあり、資料の残存状態が極めて悪い。この事実は細かな分析を妨げており、この地域への見通しに確証が持てないままでいる。この点が、29年度の進捗状況の評価に影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
コーカサスの研究はひとまず結論が出たので、後はデータの補強に努めるのみである。また、トルコのスマキ・ホユックは膨大な資料があるものの、その居住時期を通じた発展の過程が不明であるため、今後は層位情報と対応させながら分析を進める必要がある。 問題の中央アジアであるが、比較データの構築に重点を置く必要があると考えている。時期は異なるが、本研究課題とは別にいくつかのプロジェクトに参加しているため、それらの研究を通じて得られた知見をフィードバックさせることで、課題の進展を進める所存である。
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[Journal Article] The Mesolithic-Neolithic interface in the Southern Caucasus: New evidence from the Damjili Cave, West Azerbaijan2018
Author(s)
Nishiaki, Y., Zeynalov, A., Mansurov, M., Akashi, C., Arai, S., Shimogama, K. and Guliyev, F.
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Journal Title
Journal of Field Archaeology
Volume: -
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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