2017 Fiscal Year Annual Research Report
ペンギンの群れ行動に着目した南極沿岸域の環境モニタリング手法の開発
Project/Area Number |
17J10603
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高木 淳一 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 超音波テレメトリー / 群れ行動 / 高精度測位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2017年度)は、2018年度に予定している野外(南極ラングホブデ袋浦)での応用に向けて、日本国内で魚類を対象とした実験を行い、超音波テレメトリーを用いたモニタリング手法の開発、具体的には高精度測位による群れ行動観察手法の開発を行った。実験は、半野外環境である屋外設置型生簀及び、完全な野外環境で行った。 半野外環境での実験は高知県上ノ加江漁港沖の角型生け簀で行った。生け簀の四隅に超音波受信機を設置した。マアジ8尾に超音波発信機を外科手術によって装着し、順次放流した。発信間隔は2.5秒に設定した。事前実験から、測位率は平均90.3%、測位精度は平均0.16mであった。約24 時間の放流中、8個体の同時測位に成功した。ある個体同士は0.1~1.5m程度の距離を保ち群れを形成した一方、群れを作らずに遊泳する個体もいることが観察された。開発した測位手法は、十分に高精度な時間(2.5秒間隔)・空間(15cm程度)スケールで群れ行動を観察できることが示された。 野外環境での実験は広島県生野島で行った。強い帰巣性をもつシロメバルの性質を利用し、群れで放流したシロメバルの帰巣経路を高精度測位によって観察した。14台の超音波受信機を用いた音響アレイを広域に配置した。シロメバル12個体をアレイ内で釣獲し、超音波発信機を外科手術によって装着した。その後、アレイ内の別の場所から放流し、約3日間の3次元位置を観察した。放流した個体は、ある1例を除いてそれぞれのタイミング・経路で帰巣することが観察された。その1例は、放流後の初動として2個体が一緒に行動していた。これは、開発した高精度な群れ行動観察手法によって明らかにできたことである。 2018年度は、開発した観察手法を用いて、アデリーペンギンの群れ行動に着目した南極沿岸域の環境モニタリングへの応用を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた国内での実験は滞りなく実施することができた。モニタリング手法も開発し、予定していた論文の投稿、国際会議及び国内学会での発表を行った。ただし、国内の水族館で予定していたペンギンを対象とした実験は、環境が整わずに実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、11月から南極へ出発する第60次南極地域観測隊の同行者候補として選出されている。開発した群れ行動観察手法を用いて、ペンギンの群れ行動に着目した環境モニタリングを行う予定である。南極の環境は、実験を行った日本の環境とは大きく異なるが、同様の環境で事前に実験することは不可能である。従って、南極でのフィールド経験者との綿密な打ち合わせや、実験のシミュレーションを行いながら、準備を進めていく。
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Research Products
(2 results)