2017 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム編集技術を用いた細胞内RhoAシグナル解析と個体脳機能解析の融合研究
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17J10615
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
張 心健 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | RhoA / GEF-H1 / リン酸化 / ノックアウトマウス / 神経細胞形態解析 / 行動解析 / ドーパミンシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者の属している研究チームはドーパミンが側坐核D1R-MSNでD1R/PKAを介して、Rasgrp2をリン酸化し活性化することで、Rap1およびその下流のMAPKを活性化し、報酬行動を促進することを報告している(Nagai et al. Neuron, 2016)。この経験から、報告者は側坐核においてドーパミンやグルタミン酸の下流でGEF-H1がRhoAの活性を制御すると考え、RhoAとGEF-H1に着目した。 RhoAの野生型、恒常活性型やRhoAを不活性化するp190RhoGAPのAAVを作製した。これらのウイルスをD1R-MSNで発現させたところ、スパイン形態やコカインによる条件付け場所指向性試験(CPP)において変化が認められた。使用したAAVは発現時期を操作できず注射後から解析時まで発現し続けている。記憶の各プロセスにおけるRhoAの役割について詳細な解析を行うために薬物操作でRhoAの発現時期をコントロール出来るpAAV-TetOne-Flexシステムを開発した。RhoAを不活性化するC3を用いAAV-TetOne-Flex-C3を作製した。D1R-MSNで一時的に発現させたところ、CPP試験において変化が認められた。 GEF-H1 S885のリン酸化抗体を作製した。コカインの腹腔内投与で側坐核におけるGEF-H1 S885のリン酸化の上昇が認められた。GEF-H1のCaMK2によるリン酸化サイトを同定し、リン酸化抗体を作製した。GEF-H1のノックアウトマウスや、S885リン酸化部位をアラニンに置換したノックインマウスを作製した。しかしながら、作製したマウスのスパイン解析や行動解析において有意な差が得られなかった。GEF-H1のノックアウトマウスと野生型マウスの側坐核におけるRhoA活性を比較したところ、有意な差が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画の通り実験を進めた。 RhoAについて、神経細胞形態解析と行動解析を行なった。 GEF-H1について、個体内でのリン酸化は確認できたが、ノックアウトマウスを用いたスパイン解析や行動解析において、有意差が得られなかった。 そこで、新たに「D2R-MSNにおけるRap1シグナルの解析」を開始した。 線条体スライスにおいてD1R-MSNでドーパミンD1Rを介してRap1の不活性化因子であるRap1gapをリン酸化することが知られており、報告者の属している研究チームはRap1gapのリン酸化抗体を既に作製している。RasGRP2およびRap1gapのリン酸化抗体を用い、D2R-MSNにおけるRap1の制御機構について解析を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Rho-kinase (ROCK1/2)はRhoAのエフェクターであることが知られている。Rock1のコンディショナルノックアウトマウスを入手し、Rock2のコンディショナルノックアウトマウスを作製した。このマウスを用い、RhoAおよびその下流のROCK1/2について個体脳機能解析を行う D2R-MSNはアデノシンによって活性化し、ドーパミンによって不活性化されることが知られている。新たに開始した「D2R-MSNにおけるRap1シグナルの解析」は、RasGRP2およびRap1gapのリン酸化抗体と、D1R-mVenusおよびD2R-mVenusマウスを用いて、D1R-MSNおよびD2R-MSN特異的なドーパミンおよびアデノシンの作用機序を解明する。
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