2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J10870
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 亮太 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ストレス / 海馬 / 心電図 / マルチユニット記録 / 電気生理学 / マイクロダイアリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスは、単発の経験にも関わらず、持続的に身体の不調を引き起こすことがある。本研究では、ストレス応答における中枢-末梢の機能連関に着目した。本年度は、単発のストレス経験によってまず中枢および末梢の生理活動がどのように変化するのかを明らかにしようと試みた。中枢と末梢の生理活動をリアルタイムで検出するため、海馬に電極を刺入して細胞外から局所場電位を記録すると同時に、心臓の直上の肋間筋に電極を固定して心電図を記録する計測系を立ち上げ、これをラットに施した。ラットに与える単発のストレス経験には社会的敗北ストレスを用いた。ストレスを与える前後に上記の同時記録を行った。その結果、ストレス経験後に不整脈を生じる個体とそうでない個体が見られ、不整脈が生じた個体においてのみ、海馬局所場電位のパワーが減弱していた。同時に、個々の神経細胞レベルにおいても発火活動が著しく減弱している様子が見られた。さらに、この海馬神経活動の低下のメカニズムとして、モノアミン系神経修飾物質の関与を検討した。海馬からの局所場電位の記録と同時にモノアミン系神経修飾物質の脳内局所濃度を測定可能なマイクロダイアリシス法を適用した。その結果、神経活動の低下が見られた個体においてのみ、ドパミンとセロトニンの濃度上昇が観察された。 以上の結果から、ストレス経験によって不整脈を生じるストレス感受性群では、脳内でドパミンやセロトニンの放出量が増加し、その結果、海馬で神経活動レベルが低下することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳の細胞外記録および心電図の同時計測により、ストレス経験が中枢および末梢の生理活動に与える影響をリアルタイムで捉えることに成功した。これにより、ストレスが全身に及ぼす影響をシステム生理学的に記述する上での基盤となる成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は海馬に限局せず、広範な脳領域でストレスによる神経活動の変化がどのように生じているか検討する予定である。
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Research Products
(8 results)