2018 Fiscal Year Annual Research Report
イタリアにおける震災復興都市計画手法と地域協働体制に関する研究
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17J10930
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
益子 智之 早稲田大学, 創造理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 震災復興都市計画 / ガバナンス体制 / 歴史的市街地再建方法 / 相互関係 / 歴史的展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、「各研究対象都市における復興計画手法と協働・運営体制の類型化と考察」と「長期的復興プロセスを評価する指標と詳細な分析方法の検証」を行うことを目的として、以下の3点について調査・研究を行なった。 第一に、初年度に構築したデータベースを更新するために、これまで行政資料の入手とインタビュー調査を行えていなかった1976年フリウリ地震被災3都市(ジェモナ市、オゾッポ市、ボルダーノ市)への現地調査を実施した。その結果、ジェモナ市とオゾッポ市の担当課へのインタビュー調査を遂行し、この調査に際して行政資料を複写し、データベースを更新した。 第二に、「研究対象都市における復興計画手法と協働・運営体制の類型化」を行うために、1976年フリウリ地震被災都市ヴェンゾーナ市をケーススタディとして物的な市街地復興プロセスと社会的な市民参加の体制の関係性を考察した。 第三に、「長期的復興プロセスを評価する指標と詳細な分析方法の検証」を行うために、研究対象とする4つの異なる地震災害における復興ガバナンスを可視化する方法の検証を行なった。この方法により、緊急時対応期から復興期を通じた主体の行為及び主体間の関係性の変容過程を図化することで、復興ガバナンスを可視化することができる。さらに、これら4つの復興ガバナンスを2つの分析軸、1)中央政府主導と地方自治の関係、2)被災市街地の特性、によりモデル化し、時系列に沿って考察することで4つの復興ガバナンスモデルの歴史的展開プロセスを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年に実施した1976年フリウリ地震被災3都市への現地調査を実施したが、ボルダーノ市では復興計画・プログラムなどの行政資料が十分に管理されていない状況であったため、調査協力を得ることができなかった。そのため、フリウリ州政府の担当者の協力を得て州の資料アーカイブセンターに問い合わせ、ボルダーノ市の行政資料の入手を試みたが、アーカイブセンターにも保管されていなかった。そのため、ボルダーノ市を研究対象から除外することとし、本研究では計9都市の復興プロセスデータベースを構築した。 また、本年度で確立した復興ガバナンスの可視化方法を定位したことにより、社会的側面から震災復興プロセスを評価する指標と詳細な分析方法を確立できた。この方法により、4つの復興ガバナンスの特徴を示すことができ、さらに2つの分析軸によるモデル化と時系列に沿った考察によって、これらの復興ガバナンスモデルの歴史的展開プロセスを解明できている。この研究の成果は、日伊の共同研究者らの国際共著論文として日本建築学会計画系論文集に投稿し、掲載されている。 以上より、本研究課題において4つの異なる大規模震災で研究対象とする9都市の復興プロセスデータベースを構築し、社会的側面から震災復興プロセスを分析する科学的方法の確立できたことから、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、現在分析を進めている、2009年アブルッツォ地震被災都市ラクイラ市の震災復興プロセスに関する研究では、この可視化方法を応用し、発災から10年の期間での復興ローカルガバナンスの構築と市街地再建の両側面から明らかにしようとしている。さらに、両者の関係性を分析することで物的・社会的側面が相互に関係し合う動的な復興プロセスを明らかにし、日本建築学会計画系論文集への投稿を予定している。 今後の課題として、4つの震災復興における歴史的市街地再建方法の歴史的展開を明らかにすることがあげられる。これまでに構築した復興プロセスデータベースを用いて、各震災復興から事例都市を選定し、各震災復興における歴史的市街地の再建方法の特徴を明らかにしなければならない。その上で、1)保全事業と再生事業のバランス、2)被災市街地の特性、などの2つの分析軸により再建方法をモデル化し、その歴史的展開を示す予定である。
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Research Products
(12 results)