2018 Fiscal Year Annual Research Report
リズムの起源の比較認知科学:動作者交代による規則性の創発過程
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17J10994
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝 野吏子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 話者交代 / リズム / 比較認知 / 同期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は音声の鳴き交わしや動作を相手と交代して行う、動作者交代(Turn-taking)におけるリズムの認知・産出に関する能力と、リズムを知覚することが社会関係の構築に及ぼす影響を、ヒト、ニホンザル、ラットにおいて明らかにすることであった。本年度は、ラットを対象としたリズム産出実験と、個体間同期実験を主に行った。また、ニホンザルの音声鳴き交わしにおけるタイミング調整に関する論文執筆、投稿を行った。 規則的、周期的に呈示される外的刺激からその規則性を抽出し、刺激のタイミングを予測し、そのタイミングに合わせて自身の動作を表出することを動作同期という。動作同期はヒトでは会話や音楽、他者との協力など、幅広い場面で発揮されている能力である。 ラットを対象として、規則的な音や光刺激に前肢動作を同期させる訓練を行った。刺激の呈示間隔(周期性)を操作したところ、ラットは周期性が長い場合には同期の正確性が低く、ばらつきが大きくなることが示された。また、音や光といった刺激の様式の違いによって、同期の正確さが異なることも示された。ヒトにおいても同様に、動作同期は周期性が長いと不正確になること、刺激の様式によって同期の正確さが異なることが示されている。本研究は、ヒト以外の動物における時間感覚の認知や、動作同期の特徴の一端を明らかにすることができた。 また、他者と規則的な動作を隣り合って行う場合に、互いにその動作のテンポが収束し、動作タイミングが同期するという現象が、ヒトでは知られている。これをラットにおいて検討するために、隣り合ってレバー押し動作を行うための訓練を行った。今度、同居個体を使用して、個体間で同期が生じるかを確かめる実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットを対象とした実験は、単独での外的刺激への同期の特徴を調べる実験を予定通り行うことができた。これらの成果は学会や研究会などで報告し、現在論文執筆を行っている。また、ニホンザルの音声タイミング調整の研究に関しては、論文と総説をそれぞれ投稿している。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットを対象とした個体間同期の実験を継続し、同期が生じるかどうか、生じやすさに個体間の親密性が影響するのかどうかを検討する。また、課題中の神経活動の記録実験に向けた準備を行う。
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