2017 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性ビブリオ菌べん毛モーター回転子の構造変化の解明
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17J11237
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
錦野 達郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | べん毛モーター / 回転子 / 回転方向制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
バクテリアの運動器官であるべん毛は、時計回り(clockwise, CW)と反時計回り(counterclockwise, CCW)の両方向に回転することができるモーターである。モーターの回転は、細胞膜内外の電気化学ポテンシャルを運動エネルギーに変換することで生じる。このエネルギー変換は、固定子及び回転子と呼ばれるタンパク質複合体が適切に相互作用することで生じる。所属研究室では、Na+駆動型べん毛をもつ海洋性ビブリオ菌をモデル生物として、モーターのエネルギー変化の機構の解明が進められている。2種類の膜タンパク質[PomA及び、PomB]からなる固定子は、Naイオンチャネルとして働き、回転子の周囲に集合することで活性化することが分かっている。回転子中のC-ringは3種類のタンパク質[FliG, FliM, FliN]からなり、固定子との相互作用によるエネルギー変換と回転方向の決定に関わる。FliGはN末端側からFliGn、FliGm、FliGcの3つのドメインをもつ。FliGmはFliMと相互作用し、FliGcはPomAと相互作用する。モーターの回転方向は、走化性シグナルと呼ばれるChe因子のリン酸化/脱リン酸化に伴うリン酸基のリレーが回転子に伝達することで生じる。この際に、生じるFliMの構造変化がFliGに伝わることで、FliGcとPomAの相互作用が変化し、回転方向が切り替わると考えられている。しかしながら、回転方向切り替えの際にFliGにどのような構造変化が生じるのかや、その際にどのように固定子と相互作用するかは明らかとなっていない。申請者は、回転子がCWとCCWに回転が偏っている状態での構造を明らかにすることで、回転方向切り替えにおけるべん毛モーターのエネルギー変換の仕組みを理解したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、これまでに得られているFliG変異体の解析を行った。そのうち、E144D変異体は回転方向の切り替え頻度が野生型の2倍に増加していた。また、G214S変異体はCCWへの回転方向の偏りがみられ、G215A変異体はCWへの回転方向の固定がみられた。これらの変異体の分子動力学シュミレーションを長浜バイオ大バイオサイエンス学部土方博士、白井博士にお願いした。T. maritimaのFliG及びFliMの共結晶構造上でシュミレーションを行ったところ、G214S変異及びG215A変異は変異によりFliGcの取りうる構造に立体障害が生じることが示唆された。一方でE144D変異は野生型と比べて大きな違いがみられなかった。また、変異が導入されているFliGmc断片を15Nラベル存在下で精製し、阪大蛋白研宮ノ入博士と共同で核磁気共鳴(NMR)法により1H15N TROSY-HSQCスペクトルを取得したところ、シュミレーションを支持する結果が得られた。これらの内容をまとめ、論文化した。現在投稿先を検討している。加えて、最も良好なスペクトルが得られたG215A変異FliGmc断片を、13C15Nラベル存在下であらためて精製し、NMR法により得られるシグナルの帰属を進めている。 また、申請者は11月から2月の3か月間米国yale大学Jun Liu博士の下に留学し、電子顕微鏡を用いたCryo-EM法による構造解析を学んだ。同方法を用いて、G214S及びG215A変異が導入されている固定子の画像を取得し、構造解析を試みた。取得した画像の数が必要数に足らないため構造解析を完了することができなかったが、議論を進めるうえで足ががりとなるデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR法は、阪大蛋白研宮ノ入博士との共同研究を継続する。現在、安定同位体ラベルしたG215A変異FliG断片で得られたシグナルの帰属を進めており、完了後野生型(WT)及びG214S変異が導入されているFliGmc断片で取得できるシグナルとの比較を行う予定である。結晶化やNMR法では、必要に応じてほかの回転子を構成する因子(FliM)や固定子(PomA, PomB)の精製条件を検討し、FliG変異体にそれらを混ぜることにより、共結晶の取得や、シグナルの変化をとらえることを試みる予定である。また、Yale大との共同研究を継続し、「電子顕微鏡を用いたcryo-EM法による固定子の構造変化の可視化」を進める。具体的には野生型(WT), G214S変異, G215A変異を用いた回転子の構造情報を明らかにし、比較を行う予定である。現在、再渡航を計画中であり、予定では7月から8月の2か月を予定している。 さらに余裕があれば、昨年度はあまり取り組むことができなかった走化性因子及び、固定子が回転方向制御に与える影響も検証する。走化性因子(CheY)により回転方向制御への影響の検証は、回転方向切り替え頻度に異常がみられるFliG-E144D変異とCheYの変異を組み合わせることを検討している。固定子の研究では、イオンの流入と回転子との相互作用を結びつける変異体の作成を試み、解析する予定である。
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Research Products
(9 results)