2017 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合ドメインを用いたin vivo RNA解析手法の創製と応用
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17J11266
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山田 俊理 明治薬科大学, 薬学部, 特別研究員(PD) (50809811)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | RNA結合タンパク質 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は、細胞内のRNAを解析するための手法開発に取り組んでいる。本年度は計画していたRNA結合タンパク質PUMを用いたプローブ開発の前提として、細胞内に存在するPUM自体の機能研究を遂行ししている。 本申請者は、大規模シークエンス解析の結果、ヒトのがん細胞においてPUMが結合し分解するmRNA(標的mRNA)を48種同定することに成功した。さらに情報解析により、抗がん剤投与時にPUMが減少することで、標的mRNAが安定化し細胞内の存在量が増加することを示した。これらの結果から申請者は、PUMが減少することで、標的mRNAの分解が抑制され、細胞内mRNAの量が増加することを明らかにした。さらに、細胞活性を測定した結果、PUMを過剰発現させた細胞では、PUM標的mRNAの量が増加しないため、通常細胞と比べ抗がん剤投与時に生存率が低下することを明らかにした。この研究では、今までの手法では解明できなかったPUMの生理的機能(PUMが減少することで、細胞が抗がん剤への抵抗性を獲得する)を解明することに成功している。PUMが抗がん剤への抵抗性と関連しているという事実は、ガン治療において重要な知見となりえる。したがって、本研究は将来的にはPUMを含むRNA分解機構が抗がん剤治療の対象となることを示唆しており、医歯薬学分野への貢献が期待される。 次年度は、一連の成果を報告するために論文を執筆、投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PUMは5’-UGUANAUA-3’という8RNA塩基を特異的に認識する。PUMは結合に関しては詳細に解明されている一方で、機能に関しては限定的な理解に留まっている。これは、PUMが実際に分解するRNAが特定できないことによる。そこで、PUMに結合し、細胞内のPUMを欠損させた際に安定化する遺伝子群を同定した。 PUMが結合するRNAをゲノムワイドに決定するために、RIP-seqを行い、PUMに結合している3097種のRNAを同定した。 次に、PUMによるRNA分解を解析するためにゲノムワイドにRNAの半減期を測定できるBRIC-seqを行った。PUMを欠損させた細胞では、101種のRNAにおいて半減期が有意に上昇した。両者の結果を重ね合わせた結果、48種が同定された。この48種がPUMにより 分解されるRNAである。 PUMによるRNA分解の生理的意義を解明するために、PUM標的RNAがどのような刺激で制御されているかを明らかにした。その結果、CDDPやCPTといったDNA損傷を誘起する抗がん剤を投与した細胞で、PUMが減少しPUM分解標的が増加することが分かった。 同定した抗がん剤がPUMの減少およびPUM分解標的の増加を誘起することを実験的に確認するために、CDDPを投与した細胞におけるタンパク質とRNA量を解析した結果、CDDP添加時にPUMタンパク質が消失する一方、PUM分解標的mRNA量が上昇した。 抗がん剤投与時のPUM機能を解明するために、細胞生存率とPUM減少との間に関連があるかを検証した。PUM過剰発現させた細胞は、CDDPを投与した際に、通常細胞と比べてより生存率が低かった。これら一連の結果、抗がん剤投与時に細胞はPUMを減少させることでPUM分解標的mRNA増加させ、結果として抗がん剤への抵抗を高めていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
PUMの研究についての成果を論文として纏めることを第一の目標とする。 また、PUMの研究で得た知見を活かし、"RNAに結合するタンパク質の網羅的同定"を行う。具体的には、リボソーム前駆体、TERRA、NEAT1 の配列上で、PUMのRNA認識部位であるPUM-HDが結合する領域を選択する。その領域を特異的に認識する変異体PUM-HDを作製する。作製した変異体PUM-HDの結合能をゲルシフトアッセイにより測定する。プローブを作製するために、分断化されたSNAPを変異体PUM-HDの両末端に融合させる。 開発したRNA特異的標識プローブを用いたプロービング法を確立するために、リボソームRNA前駆体をRNA特異的標識プローブで回収する。すなわち、RNA特異的標識プローブを発現させた細胞に、SNAP-ビオチンを取り込ませる。次に、細胞を超音波で破砕したのち、ストレプトアビジンビーズを用いて標的であるリボソーム RNA 前駆体が回収されることを、定量的 RT-PCR法により確認する。生成途中にRNA-タンパク質複合体が乖離する問題が生じた場合には、UVクロスリンキング法を用いて、タンパク質とRNAとを架橋することで、複合体を安定化させて問題解決を図る。 得られたリボソームRNA複合体に含まれるタンパク質を質量分析により同定することで、リボソームRNA前駆体結合タンパク質が回収されたことを確認する。
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Research Products
(5 results)