2017 Fiscal Year Annual Research Report
社会性魚類の顔認知や意図的騙しの研究: 脊椎動物の社会認知の起源を目指して
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17J11490
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐藤 駿 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 進化 / 魚類 / 認知 / 心の理論 / 他者視点取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題(魚類の社会認知様式)についての予備実験を行った。基質に産み付けた卵を捕食者から隠蔽する魚、マリアシクリッドBujurquina vittataの繁殖方法を確立し、捕食者提示実験を行った。マリアシクリッドは飼育水槽を水換えすることによって産卵が誘発されていた。マリアシクリッドが産卵後、実験水槽に卵捕食者を想定したGeophagus surinamensisを収容、両者の行動を観察した。観察の結果、捕食者が卵が産み付けられた基質のほうを向いているときは、親個体の卵隠蔽行動(卵が付着した基質を裏返す、卵の付着した基質に別の基質を被せる、卵の付着した基質を別の場所に移動する)が観察される可能性は低かったが、捕食者が卵とは別の方向に身体を向けているとき卵隠蔽行動は多く観察された。これらの結果は、マリアシクリッドの両親は捕食者の視線、自身の位置、自身の卵の位置関係を的確に識別・認知し、卵隠蔽行動をおこなったことを示唆しているだろう。また、実際の生体ではなく動作が統一された刺激でマリアシクリッドの卵保護行動を観察するためCGモデルを作成した。4月からこのCGモデルを用いてマリアシクリッドの両親が捕食者の視線を識別出来るか、更に実験を行う予定である。また、コンビクトシクリッドのOther-regarding preference: ORP (他者に利益を好む性質)についての実験を行った。コンビクトシクリッドは『自身と繁殖パートナーであるメス個体に報酬が与えられる選択肢』を『自身のみに報酬が与えられる選択肢』より選ぶことがわかった。この結果は魚類においても他者に利益を与える行動は、『他者の状況などを理解・認知』した上で『他者に利益を与えようとする情動』に基づいて引き起こされている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の予定どおり、実験個体の予備観察を行った。また、魚類の社会認知能力に関する他の実験も同時に進行中である。これらのデータを合わせれば、魚類の社会認知能力の様式を明らかにできると考えられる。当課題の一部は、当該ジャンルの国際科学誌の査読下である。また、次年度の実験準備も整っており、引き続き成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本年度はCGモデルを用いたモニター実験を行う予定である。魚類に対するPCモニターを用いたモデル提示実験はすでに一定の成果をあげており(e.g., Satoh et al. 2016)、同様の実験方法で成果が期待できるだろう。また、本課題の一部は科学誌に投稿中である。また、ひきつづき本課題の内容は国際雑誌に投稿していく予定である。その調整、執筆も次年度の課題である。
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