2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞老化における核小体の形態・機能変換の分子機構の解明
Project/Area Number |
17J40011
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井形 朋香 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化とは、様々なストレスにより不可逆的な増殖停止が誘導される状態である。細胞老化した細胞は細胞増殖が停止した状態であるため、細胞内のエネルギー消費は低下すると考えられてきたが、その一方で、細胞老化した細胞は活発な代謝活性やサイトカインなどの分泌を特徴としており、細胞老化した細胞では脂肪酸代謝や解糖系の亢進によりエネルギー産生が高まっていることがわかってきている。このように細胞老化により細胞内のエネルギー状態は大きく変化していることが予想されるが、細胞老化における細胞の性質変化や細胞の生存維持に細胞内のエネルギー状態の変化がどのように関わっているのかは不明である。本研究では細胞内最大のエネルギー消費の場であり、細胞内のエネルギー恒常性を司る核小体の機能に着目し、細胞老化における核小体の変化の分子機構とその役割を明らかにすることを目的としている。 該当年度において、核小体を用いたスクリーニングで得られた細胞老化の抑制に関わる候補因子について、細胞老化の関連性を多くの観点(細胞増殖、老化マーカー、イメージング、代謝活性、遺伝子発現など)から検証した。その結果、細胞老化に関わる新規の因子を同定した。さらに、候補因子による細胞老化を抑制するメカニズムを明らかにするため、次世代シーケンサーを用いた網羅的なChIP-Seq解析を行なった。その結果、候補因子が特異的に結合する遺伝子領域を複数同定することに成功した。また、海外の資源バンクから入手したノックアウトマウスの解析を行なった結果、候補因子のノックアウトによって個体レベルでも細胞老化が引き起こされている可能性を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核小体を用いたスクリーニングで得られた細胞老化の抑制に関わる候補因子について、細胞老化との関連性を見出すことができたことは期待通りの結果であり、スクリーニングで当初意図していた因子の取得に成功したと考えられる。また候補因子による細胞老化を抑制するメカニズムについて、候補因子が特異的に結合する遺伝子領域を複数同定することに成功した。今後得られた標的遺伝子の調査を進展させていく予定である。ノックアウトマウスの解析については、当初の予想に反してマウスの繁殖が困難であったが、改良を重ねて最終的には解析に必要な個体数の確保を可能とし、現在個体レベルでの細胞老化の検証を進めている段階である。これらの進捗状況を総合し、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
候補因子による細胞老化を抑制するメカニズムを明らかにするため、候補因子が特異的に結合する遺伝子の特定を行い、標的遺伝子と細胞老化との関連性を調査していく予定である。またノックアウトマウスを用いて、細胞老化が進行している組織を特定し、組織における候補因子の細胞老化及び個体老化における役割について検討する予定である。
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Research Products
(1 results)