2017 Fiscal Year Annual Research Report
Enhanced sensitivity of a gas sensor for cancer patient incorporating skeletal silica nanoparticle with plasmonic metal nanoparticles
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17J40042
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
高井 千加 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(RPD) (30599056)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | チオール / スケルトン / シリカ / ラマン分光 / 金 / 銀 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌の腫瘍マーカーとなりうるチオールガスの高感度センサー開発を高次目標とし,当該年度はチオール分子の表面増強ラマン散乱を(SERS)を利用した金属担持スケルトン粒子の構造設計を行った.大腸癌患者のおなら成分に含まれるチオールガスの量は,健常者と比べると多いが,濃度としては非常に低い.そこで,高感度チオールガスセンサーとするためには,チオールを吸着する金属粒子が十分量スケルトン粒子上に担持されていること,金属粒子がスケルトン上でSERSを効果的に発現する粒子径及び粒子間隙を持っていることが重要となる.具体的内容として,金及び銀粒子を選択し,①これらの粒子径制御,②スケルトン粒子と金属粒子の相互作用向上,③スケルトン粒子上への金属粒子担持量の調整を行い,④これらに対しチオールガスを暴露しSERSピークの確認を行った.①について金属粒子の粒子径制御はクエン酸など保護剤の選択が必要となる.②について金属粒子同士が凝集しすぎず近接した状態でスケルトン粒子上に存在するためには,保護剤が被覆した金属粒子とスケルトン粒子表面の相互作用を向上させる必要がある.負電荷をもつクエン酸との相互作用を向上させるため,スケルトン粒子表面を,正電荷を持つアミノ基を種々割合で有するシランを用いて修飾し表面物性の調整を行った.③スケルトン粒子上の金属粒子の粒子径及び担持量の調整は,スケルトン粒子と金属粒子の割合により行い,UV-vis分光光度計及び電子顕微鏡で確認した.④について,チオールガス暴露試験を行いラマン分光光度計によりSERS発現を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記した①~③について研究計画通りに遂行できた.金粒子の粒子径は,先行文献が示す通りクエン酸と金前駆体の割合で調整できることを確認し,前実験として中実シリカナノ粒子表面への担持を確認した.その際,シリカ粒子表面を改質する必要があり,未改質,チオール基改質よりもアミノ基改質が有効であることが分かった.また,SERS発現が効果的に現れるのは,スケルトン粒子表面で金粒子同士がナノギャップを形成していることが必要であり,これを達成するためにアミノ基変性シリコーンを用いてスケルトン粒子表面を改質することが有効であることを確認した.アミノ基変性シリコーンは,ジメチルシリコーンのメチル基の一部がアミノ基に置換されているものである.置換量が多いシリコーンで改質したスケルトン粒子ほどクエン酸保護した金粒子の担持量が増え,ナノギャップの存在が増えたことをSEM観察から確認した. ④について,チオールガス暴露後の金粒子担持スケルトン粒子のSERSピークが小さいため,チオールガスと金属粒子の相互作用を上げるために,保護剤フリーで金属粒子を作製することを試みた.スイス材料試験研究所(Empa)にて,硝酸銀を紫外線照射により還元し銀粒子を合成することとした.本手法により粒子表面に保護基が無い状態で銀粒子が得られる.反応系のpHを塩基側に調整することで,負電荷のスケルトン粒子表面に担持される銀粒子量が増加することも分かった.スケルトン粒子表面を有効に利用するため,乾燥粒子を減圧下に静置し,常圧に戻す際に銀前駆体溶液を粒子内部に侵入させた.また,紫外線照射時間及び強度を調整することで銀粒子径を調整した.次年度計画に先行し,スケルトン粒子の成形体を作製し,マクロ構造とチオールガス吸着挙動の関係についても調べている. これらの成果を基に特許1件を出願し,1件の論文が査読中,2件の論文を執筆中である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は大きな変更はない.研究を遂行する上での大きな問題点も現状ない. 研究計画にある「高感度センサーに資するスケルトン粒子微構造の決定」について引き続き検討する.昨年度の結果を基盤とし,SERS発現が効果的に現れた粒子について,スケルトン粒子上金属粒子の配置及び,スケルトン粒子と金属粒子の相互作用,金属粒子表面の清浄性について調べる.また,チオールガスを希釈し,スケルトン粒子を用いることによる有効性について,中実シリカナノ粒子と比較する.スケルトン粒子上金属粒子の配置は電子顕微鏡,金属粒子との相互作用はFT-IR,金属粒子表面の清浄性はXPSにより調べる予定である. 同様に研究計画にある「スケルトン粒子マクロ構造の決定」について,スケルトン粒子成形体が持つ粒子間隙,スケルトン粒子のウィンドウが,ガスの透過性,滞留性を向上しているかどうか,についても,成形体の空隙率と比較し関連づける.スケルトン粒子のウィンドウは窒素ガス吸着及び電子顕微鏡から調べる.シリカフレームの密度測定は検討中であるが,密度既知の樹脂中に含浸し,重量測定により算出することを予定している.ピクノメーターによる測定結果と比較する.スケルトン粒子成形体の空隙率は水銀ポロシメーターを利用する.チオールガス暴露試験を,スケルトン粒子成形体で行う.関西大学佐藤知広准教授と適宜打ち合わせし,成形体中へのガス透過性,滞留性が有効となる成形体作製条件を決める.チオールガス暴露後のスケルトン粒子成形体について,SERS発現場所に不均一性がないか,ラマン分光光度計と電子顕微鏡を併用して調べる.
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Research Products
(22 results)