2018 Fiscal Year Annual Research Report
視触覚のクロスモーダルな質感認知の脳機能解明と高質感の表面加工への適用
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17J40084
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
于 英花 岡山大学, 大学院ヘルスシステム統合科学研究科, 特別研究員(RPD) (60812039)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 質感認知 / 触覚脳機能 / クロスモーダル / 脳イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
「高質感」のものづくりは21世紀の日本産業に強く求められている。しかし,製品質感の評価は職人の経験,見た目や手触りなどの主観的な判断に頼り,客観的な質感評価技術はまだ確立されていない。質感はヒトの視覚や触覚などの多感覚情報を脳内の統合処理で得られる複雑なものであり,質感の数値化・定量化ができないのは,質感認知の脳機能が未だ解明されていないためである。そのため,高質感製品の創出には,質感認知の脳機能を解明して,客観的な質感評価指標を作成することが重要である。本研究では,視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知の脳内処理メカニズムを究明し,質感認知特性に基づいた高質感表面加工システムの研究開発及び試作を行うことを目的としている。 本年度では,まず,前年度の成果に基づいて,視覚と触覚刺激を洗練して,視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知に関するfMRI実験が実施した。さらに,PPI(Psycho-Physiologic Interaction)解析・拡散テンソル画像(DTI)解析を取り入れ,質感認知の脳内機能的・解剖的ネットワークを検討した。次に,脳情報デコーディング解析を適用し,質感認知の脳内処理の各階層と階層間の相互作用を検討し,質感データベースに必要な視触覚パラメータを検討した。さらに,本年度から最新の7テスラ高空間分解能fMRI装置の利用が可能となり,脳情報デコーディング解析の精度向上が期待できる。そのため,これまで予定している実験を行うと同時に,ヒトの第一次体性感覚野の各層の機能的違いの観察と各層間の相互作用の検討実験も設計・実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高質感表面加工技術が確立されていない主な原因として,高質感に寄与する物理パラメータの特定は困難な点が挙げられる。近年,認知心理学的手法に基づく感性語を用いた主観的な質感評価と物理量の相互関係の解明を試みる研究が多く行われているが,ヒトの主観に委ねる問題と,複数のパラメータ同時に変化する際の質感評価の全貌が検討できない問題に直面している。例えば,視触覚情報の入力パターンの組合せは無限で有りながら,それらの情報の脳内処理も複数の階層を介して相互作用しているため,認知心理学的手法だけでの検討は限界がある。本年度では,前年度の成果に基づいて,脳情報デコーディング解析を適用し,質感データベースに必要な視触覚パラメータを検討した。さらに,ヒトの第一次体性感覚野の各層の機能的違いの観察と各層間の相互作用の検討実験も設計・実施した。現在,これらの成果を中心とした論文が完成し,関係学術論文誌へ投稿した。以上の進行状況と研究成果を総合的に判断し,本研究課題は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
対象の高質感は,素材の物理パラメータ・質感評価データ・脳活動パターンの3種類のデータで確定できる。本年度では,これまでの成果により,3種類のデータの関係性は明らかとなり,表面加工質感情報データベース・モデルと格納対象データを検討し,表面加工質感情報DBを加えた高質感の表面加工システムを提案する。
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Research Products
(3 results)