2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J40117
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
小田(山溝) 千尋 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 環境ストレス / クロロフィル / カロテノイド / シグナル伝達機構 / ABAシグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
深刻な地球温暖化や干ばつによる農地の悪化が進み、単位面積あたりの収量や栄養価を高めることが重要課題となっている。これまで、環境ストレス耐性とホルモン、光合成色素とホルモンなどそれぞれの分野で研究が進められてきたが、本研究ではこれらを組み合わせることで複合的な制御機構を解明し、厳しい条件下でも生育できる植物の光合成色素量を制御することで、収量や栄養価を高めた環境ストレス耐性作物を作出する技術の構築を目指す。 ABAシグナリングをほぼ完全にブロックしたシロイヌナズナは、乾燥耐性を喪失する一方で、通常の生育条件下では野生株よりも濃い緑色を呈している。これは、乾燥耐性の形質と、生産性や栄養価といった作物としての重要な形質が拮抗的に作用する可能性を示している。通常生育条件下で生育させた本変異体のロゼット葉におけるクロロフィルおよびカロテノイドは、野生株と同様の組成が蓄積していたが、その蓄積量は野生株の1.5倍程度上昇していた。しかしながら、光合成色素の生合成酵素遺伝子および分解関連遺伝子群の発現量は、野生株との間に顕著な差は認められず、本変異体のロゼット葉に光合成色素が多く蓄積している原因はわからず、さらなる解析が必要である。一方、ABA培地上で生育させた植物のロゼット葉をHPLC分析に供試した結果、野生株は光合成色素が大幅に減少したのに対し、ABA非感受性になった本変異体ではその減少は微量であった。また、野生株ではクロロフィル生合成遺伝子群およびクロロフィル結合タンパク質合成遺伝子の発現量が低下していただけでなく、クロロフィル分解関連遺伝子群の発現量が顕著に増加していたが、変異体では野生株と比較して、光合成色素分解関連遺伝子群の発現上昇が抑制されていた。このことから、ABAシグナリングと光合成色素分解経路に何らかの関係がある可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受入れ研究室で作出されていたアブシジン酸(ABA)非感受性になり、乾燥ストレス耐性を喪失したシロイヌナズナについて、HPLC分析を行い、光合成色素の定性及び定量を行なった。さらに、マイクロアレイのデータ解析により、ABAシグナリングとクロロフィル及びカロテノイド分解経路に何らかの関係があることを見出した。 また、光合成色素代謝変異体種子についてホモ化を行い、交配及びCRISPRにより近縁遺伝子の多重変異体の作出、採種を完了した。これにより、次年度からの光合成色素代謝変異体の環境ストレスに対する応答検定を実行する準備が整えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
ABAシグナリングをほぼ完全にブロックしたシロイヌナズナは、通常生育条件下では野生株と同じ組成の光合成色素を1.5~2倍程度蓄積していた。しかしながら、光合成色素の生合成酵素遺伝子および分解関連遺伝子群の発現量は、野生株との間に顕著な差は認められず、本変異体のロゼット葉に光合成色素が多く蓄積している原因はわからなかった。ABA培地で成育させた植物体を用いた発現解析により、ABAシグナリングとクロロフィル及びカロテノイドの分解経路との間に何かしらの関係がある可能性を見出した。次年度では、これまでに作出した光合成色素代謝変異体シロイヌナズナを用いて、環境ストレスに対すえう応答性を検定していく。
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