2017 Fiscal Year Annual Research Report
土壌の乾燥再湿潤による有機物分解メカニズムの解明と定量的解析
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17J40120
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
沢田 こずえ 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌 / 乾燥再湿潤 / 微生物バイオマス / CO2放出 / アンプリコンシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
将来の気候変動によって、土壌が乾燥再湿潤される回数が増加すると予測されている。土壌が乾燥再湿潤されると、微生物基質炭素(C)の増加を引き金として、微生物活性の増加とそれによる土壌からのCO2放出量の増加というカスケード反応が起こる。そこで本研究では、乾燥履歴や微生物群集組成が異なる日本の森林と農耕地土壌を用いて、乾燥再湿潤による有機物分解メカニズムの解明を行うことを目的とする。 今年度は、日本水田土壌において、異なる強度の乾燥再湿潤処理が微生物バイオマスCとCO2放出速度に与える影響を調べた。さらに、日本森林土壌の長期(2か月)風乾保存が微生物群集組成に与える影響を調べた。 その結果、土壌の乾燥強度が強くなるにつれて、微生物の死滅によるバイオマスC減少割合が高くなった。また、死菌体が基質Cになるため、易分解性Cが微生物によるCO2放出の制限因子にならなくなる(基質C飽和になる)場合があった。これまでのデータも含めて整理したところ、このC飽和を惹起するバイオマスCの減少割合の閾値として20%を推定した。つまり、乾燥再湿潤などの攪乱によって土壌微生物の20%が死滅した場合には、既存の有機物分解モデルは適用できないことが分かった。 また、アンプリコン解析による細菌群集構造は、8つの日本森林土壌を風乾保存しても湿潤の場合とほとんど同じであった。つまり、死菌体中のDNAの大部分は、風乾状態では分解されずに残ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本水田土壌への様々な乾燥再湿潤処理が微生物バイオマスCとCO2放出速度に与える影響を調べ、さらにこれまでのデータと合わせて解析したことにより、土壌への乾燥再湿潤処理がバイオマスとCO2放出に与える影響の全容が解明されつつある。また、成果の一部は、Applied Soil Ecology誌に発表するなど、着実に成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、土壌の乾燥再湿潤が微生物群集組成に与える影響を解明し、有機物分解メカニズムを解明することを目指す。具体的には、乾燥再湿潤処理によって微生物の大部分が死滅することが分かっている日本森林土壌において、生き残った微生物の群集組成をDNAアンプリコンシークエンスにより解析する。
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Research Products
(3 results)