2018 Fiscal Year Annual Research Report
土壌の乾燥再湿潤による有機物分解メカニズムの解明と定量的解析
Project/Area Number |
17J40120
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
沢田 こずえ 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 土壌炭素循環 / 乾燥再湿潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来の気候変動によって、土壌が乾燥再湿潤される回数が増加すると予測されている。土壌が乾燥再湿潤されると、微生物基質炭素(C)の増加を引き金として、微生物活性の増加とそれによる土壌からのCO2や養分放出量の増加というカスケード反応が起こる。そこで本研究では、乾燥履歴や微生物群集組成が異なる土壌を用いて、乾燥再湿潤による有機物分解メカニズムの解明を行うことを目的とする。 2018年度は、乾燥履歴の異なる日本、カザフスタン、タイの森林や農耕地土壌において、乾燥再湿潤処理の繰り返しが微生物バイオマスとCO2放出速度に与える影響を調べた。さらに、滅菌処理した土壌への乾燥再湿潤処理の繰り返しの影響を調べ、土壌微生物でなく土壌有機物の易分解化が進むかどうかを解明した。 その結果、土壌の乾燥履歴が多いカザフスタン土壌や日本、タイ農耕地土壌では、乾燥再湿潤処理の繰り返しによっても微生物バイオマスCの増減はほとんどなかった。一方、土壌の乾燥履歴が少ない日本やタイの森林土壌や日本水田土壌では、一回の乾燥再湿潤処理によって微生物の死滅によるバイオマスC減少割合が高くなった。しかし、乾燥再湿潤処理を繰り返すと、粘土含量の高い土壌では最終的にバイオマスCが減少し、粘土含量の低い土壌ではバイオマスCが増加した。粘土含量の低い土壌を滅菌処理後、乾燥再湿潤処理を繰り返すと、土壌有機物由来バイオマスCが増加した。つまり、土壌有機物の易分解化が進行したことが解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究課題では、乾燥履歴や微生物群集組成が異なる土壌において、乾燥再湿潤による有機物分解メカニズムの解明を行うことを目的に研究を行っている。現在までに、乾燥履歴の異なる土壌において、乾燥再湿潤処理の繰り返しが微生物バイオマスとCO2放出速度に与える影響を解明した。その結果、特に粘土含量の低い土壌では、乾燥再湿潤によって土壌有機物の易分解化が促進される可能性を見出した。以上の成果は、土壌の乾燥再湿潤によって、土壌からの炭素放出量が多くなることを示唆しており、重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、粘土含量が異なる土壌における乾燥再湿潤の影響を評価することで、メカニズムの解明に迫る。特に、「粘土含量が低く有機物保持能が低い土壌では、乾燥再湿潤によって土壌有機物の易分解化が進む」という、これまでの結果から得られた仮説を証明する。 具体的には、粘土含量が異なる日本水田土壌において、γ線照射により微生物を死滅させた土壌に同一の水田土壌微生物群集を添加し、微生物の影響を同一にした条件下で、乾燥再湿潤処理の影響を評価する。これにより、土壌有機物の易分解化が粘土含量によって異なるかを評価し仮説を検証する。以上は、今後の気候変動によって土壌の炭素循環がどのように影響されるかを解明する上で重要である.
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