2017 Fiscal Year Annual Research Report
興奮性細胞における代謝動態の数理モデル構築とシミュレーション
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17J40125
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 ひとみ 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(RPD) (70584019)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
特別研究員(RPD)としての研究活動を開始する前は、包括的細胞シミュレーション環境E-Cell Systemを開発した研究室で研究活動に携わっていた。シミュレーションは、実験から得られたデータの背景にある因果関係を定量的に記述する上で、有用な手段である。しかし、これまでの研究では、既に論文発表されている数理モデルに基づいた速度式の拡張や組み合わせの変更を行ってきたため、既存の数理モデルで説明できる範囲に限定された解釈を行うことが多かった。特別研究員としての研究活動では、観察事象に基づいて仮説を立て、その仮説を検証するために一から数理モデルを構築する研究に携わりたいと考えていた。 初年度は、(1)モルモット単一心筋細胞モデルを活用した研究の継続、(2)アストロサイト-ニューロン乳酸シャトル仮説のモデル構築、(3)マウス小脳の脳回形成シミュレーションに向けた予備的な検討、を行った。 (1)東邦大学薬学部薬物学教室との共同研究で、肺静脈の異所性心筋細胞層における異常自動能が発生するメカニズムに着目した。遅延Na(+)チャネル電流のモデルを追加し、数理モデル上で異常自動能の発生に至るパラメータの組み合わせを検討した。 (2)アストロサイト-ニューロン乳酸仮説の数理モデルをE-Cell System上に構築し、先行研究(Sada et al., 2015)の追試として、ニューロンの乳酸脱水素酵素(LDH)を抑制する実験結果をシミュレートした。しかし、代謝動態と電気的な挙動のモデルの連携が不十分であったため、先行研究で報告された観察事象を定量的に説明できるまでに至らなかった。 (3)マウス小脳の脳回形成について、文献調査をした。主に、遺伝的に小脳に異常が生じる変種に関する情報を収集し、それぞれの変種において特定の細胞種の振る舞いを比較した。また、マウス胎仔を用いた予備実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)と(2)については、動的な代謝シミュレーションに用いる数理モデルをE-Cell System上に構築し、ソースコードを公開するまでに至った。また、(3)については、受け入れ研究室での動物実験から得られた結果の観察に基づいて仮説を導き出すことから始める新しい研究を開始した。特別研究員としての研究活動において目標としていた、既に論文発表されている数理モデルに基づいた速度式の拡張や組み合わせの変更ではなく、仮説を検証するために一から数理モデルを構築する研究を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究では、(1)は立命館大学生命科学部の学部学生に研究の引き継ぎを依頼し、今後、遠隔で指導をしながら進める。(2)は、数理モデルの構築を中断し、メチロームデータなど、大規模なオミクスデータのバイオインフォマティクス解析を行う。(3)は、数理モデルの開始以前に、脳回形成に関する仮説を立て、その仮説を検証する実験を繰り返す。
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Research Products
(1 results)