2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経筋ネットワーク変性における分子シグナル異常を標的とした治療法開発
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17J40128
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯田 円 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 球脊髄性筋萎縮症 / アンドロゲン受容体 / Srcシグナル / Src阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
A. 運動ニューロン疾患における時空間的分子シグナル異常の解明と治療法開発 ①患者バイオサンプルを用いた検証:これまでの研究代表者の研究より、SrcシグナルがSBMAの病態に大きく関連している可能性が考えられた。そこで患者剖検組織(脊髄・骨格筋)、骨格筋生検組織を用いてSrcシグナルの変化を検証したところ、コントロールと比較してSBMA患者でリン酸化Srcの上昇をみとめ、SBMAの発症初期からSrcシグナルが活性化していると考えられた。さらにSBMA患者より樹立したiPS細胞由来運動ニューロンおよび変異ARを一過性強制発現させたヒト骨格筋細胞におけるSrcリン酸化の評価を行った。これらはいずれもコントロールと比較してSBMAモデルでSrcリン酸化の上昇をみとめ、これまでの結果を支持する内容であった。 ②Src阻害薬の作用機序の解明:SBMA細胞モデル(神経細胞と筋芽細胞)とSBMAマウスモデル(脊髄と骨格筋)においてSrc阻害薬投与群と非投与群を作成し、Srcのeffector molecule (p130Cas, Stat3, p38MAPK. Akt)のリン酸化レベルについてウエスタンブロットを用いて評価したところ、p130Casの活性化が病態に関与していることが示唆された。そこでSBMA細胞モデルにsiRNAを用いてp130Casの発現を抑制すると細胞のviabilityは改善し、p130Casを一過性強制発現させると細胞のviabilityは低下したことからSBMAの病態においてp130Casの活性化が重要であることが明らかとなった。 B. 下位運動ニューロンにおける神経回路障害の分子メカニズム CAGリピートが97個に延長したヒトARをloxP配列で挟み、C末端にNanolucルシフェラーゼ配列をもつ全長約4.5kbpの人工遺伝子を合成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はSBMA患者の剖検組織ならびに生検組織を用いて、SBMA患者におけるSrcシグナルの異常を明らかにした。またSBMA患者より樹立したiPS細胞由来運動ニューロンおよび変異ARを一過性強制発現させたヒト骨格筋細胞においてもSrcリン酸化の亢進がみられることを明らかにした。さらにSrc kinase inhibitor(SKI)にSBMAモデルマウスの病態抑止効果がみられたことから、SKIの作用機序の解明を進めた。Srcのエフェクター分子を網羅的に解析した結果、p130Casのリン酸化上昇がSBMAの病態において重要であることを見出した。本年度までに行った研究結果をまとめ「Src inhibition attenuates polyglutamine-mediated neuromuscular degeneration in spinal and bulbar muscular atrophy」というタイトルで論文を作成し、現在Nature Communications誌に投稿中である(under revision)。 下位運動ニューロンにおける神経回路障害の分子メカニズムの解明については、当初の予定よりも多少遅れているが、SBMAにおけるSrcシグナル異常を標的とした治療法開発が予定よりも進行しているため、今後は下位運動ニューロンに着目した研究に注力できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
SBMAにおける運動ニューロンー後根神経節(DRG)ネットワークに注目するにあたり、研究代表者が以前行ったSBMAマウスモデルの脊髄を用いた網羅的スクリーニングで得た結果を基に、SBMAモデルマウスのDRGを用いて野生型マウスのDRGと比較し、シグナル異常の有無を解析する。その上でAR-floxマウスを用いてDRG特異的にARをノックダウンし、運動ニューロンや骨格筋に与える影響を解析する。
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Research Products
(3 results)