2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J40189
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
荒川 徹 上智大学, 国際教養学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ミニマリズム / 現代美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に実施できなかったアメリカ出張調査を核として、本研究の新たな成果を2019年7月刊行の著書『ドナルド・ジャッドと構造的ミニマリズム』にまとめて執筆する作業に取り組んだ。7月11-19日にロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークで行った調査の中心となったのは、LACMAでトニー・スミス《スモーク》、SFMOMAで「ドナルド・ジャッド スペシフィック・ファニチャー」展、Dia:Beaconにおいてミニマリズム・ポストミニマリズム関連作品の調査、ドナルド・ジャッドのアトリエである101スプリング・ストリートの調査である。 主要な成果は以下である。 (1)トニー・スミス《スモーク》がスペースフレーム構造をもつ革新的な彫刻であり、マッスとしての彫刻といかに異なっているかを、他の彫刻構造と比較しつつ明らかにした。また、MOMAでは同作品の小型のヴァリエーションである《ムーンドッグ》が野外に展示中であり、並行して調査を行った。 (2)「ドナルド・ジャッド スペシフィック・ファニチャー」展は、ジャッドがデザインした家具を集めた貴重な展覧会であり、家具に実際に触れつつ、ストレートデザインと身体の関係を分析した。 (3)101スプリング・ストリートはジャッドが68年に購入した自宅兼スタジオのビルであるが、芸術作品と生活の境界がない居住スペースになっていた。調査に基づき、ジャッドの生活実践も含めた、ジャッドの芸術思想の再構築を行った。 上記、出張成果の充実のため、著書の刊行は、当初よりも遅れているが、既存の資料の分析だけではなく、より作品と空間の実態に即した、現実的な考察へと発展させることが可能になった。成果の刊行によって、広く世に問うため、継続して集中的な執筆作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の構想より、ドナルド・ジャッドの研究に集中的に取り組むものとなった。そのことによって、ジャッド研究の分野においても、包括的な視野から研究に取り組むことができた。美術と建築の総合的研究というテーマにおいて、具体的な実例から、かつ美術家という特殊な視点を活かすことで、研究の意義が深まると考えたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、自身の著書の完成を大きな目標としつつ、ジャッドに関しての研究連携(勉強会ほか)を他の研究者と進め、著書をベースとした、美術研究と制作を含む横断的観点からの研究に備える。
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