2018 Fiscal Year Annual Research Report
多感覚環境における変化検出と感覚系間統合を支える脳機能ネットワークのダイナミクス
Project/Area Number |
17J40221
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 絵実 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 誘発脳磁場 / 信号源推定 / 視聴覚間の相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、脳磁図(MagnetoencephJography MEG)を用いて、多感覚環境下での刺激変化検出と感覚系間統合を支える脳機能ネットワークのダイナミクスを解明することを目的とし、3つの下位課題を設定し、年度毎に下位課題を1つずつ実施する計画であった。 昨年度は、単一感覚変化時と多感覚同時変化時の脳磁場活動を比較し、非常に多くの脳領域において条件間で有意な相互作用効果とその時間的な変遷を明らかにした。この結果は、本年度7月に開催された第41回日本神経科学大会(神戸)にて、ポスター発表をおこなった。 本年度の課題は、相互作用的効果が感覚系間の統合に関与する可能性を検証するため、複数感覚刺激変化の意味的内容(カテゴリー)が一致の場合と不一致の場合の脳磁場を比較することであった。相互作用的経路が感覚系間の統合に関与するのであれば、カテゴリーにおける感覚系間の一致と不一致によって脳磁場に差が表れると予想される。2つ目の下位課題では、複数感覚刺激同時変化のみを含む刺激系列を用い、感覚系間一致時の脳磁場を不一致時と比較した。本研究の特異的な点である「継続刺激中の刺激同時変化」は、同時変化の時間的な前後関係という要因を生むため、比較条件は、変化前の視聴覚間カテゴリーの一致・不一致×変化後の視聴覚間カテゴリーの一致・不一致の4条件となった。センサーデータに基づき、左右の脳半球ごとに9つの誘発成分を同定し、それぞれの潜時と振幅を測定し、条件間で比較した結果、変化前の一致・不一致が影響する脳磁場活動領域や時間帯は、変化後の一致・不一致が影響するそれとは異なる、という結果が得られた。これらの結果は、来年度に開催される第42回日本神経科学大会(新潟)にてポスター発表をおこなう予定である。現在は、これらの活動の信号源推定を行い、より詳細な活動領域について解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、予定していた二つ目の下位課題の誘発反応解析が進み、その結果は、2019年度の日本神経科学会にて発表予定である。また、現在これらの活動の信号源推定を行い、より詳細な活動領域について解析中である。並行して三つ目の下位課題の解析にも着手していることからも、研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、まず、現在進行中の下位課題3の誘発反応解析を完了させる。そして、誘発反応解析によって予想以上に多くの脳領域で複雑な相互作用的な活動が認められたため、これらの結果を一旦まとめ、考察する。その後、可能であれば、下位課題2,3について周波数解析を実施する予定である。最終的には、三つの下位実験の結果を総合的に考察し、視聴覚間統合にかかわる脳磁場活動の時空間動態についての論文としてまとめる予定である。
|